「初回限定の定期コースを売っているが、最終確認画面の表示が法律どおりか自信がない」というEC担当者は少なくありません。定期購入の相談件数は年9万件を超え、最終確認画面の表示不備だけで業務停止命令が出る時代です。
この記事では、改正特定商取引法が定期購入に求める表示義務と解約ルールを整理し、自店の申込フローを1日で点検して直す手順まで解説します。2026年に動き出したダークパターン規制の影響も、現時点でわかる範囲でまとめました。
「最終確認画面に何を載せれば足りるのかわからない」「解約の電話対応が追いつかず不安がある」といったご相談があれば、ぜひお気軽にご相談ください。▶ サービス紹介資料をダウンロードする(無料)
定期購入の表示ルールを後回しにしたEC事業者に起きていること
「2回目の商品が届いてから定期購入だと気づいた」という問い合わせが、ある日を境に急に増えます。定期コースを始めたEC事業者の現場では、珍しくない光景といえます。
定期購入をめぐる消費生活相談は、2023年度に80,315件、2024年度に89,401件、2025年度には93,065件まで増えました。2026年度も5月末の時点で9,958件に達しており、減る気配はありません。
相談の中身を見ると、「1回限りだと思った」「縛りなしと書いてあったのに届き続ける」という誤認型が大半を占めます。差額精算を求められた、申込途中で別の定期コースに切り替わっていたという訴えも目立ちました。
消費者側の年代にも特徴があり、現場の取材では相談の約7割が50歳以上という報告があります。小さな注釈や折りたたみの中に条件を書く設計は、この層にはほぼ読まれないと考えたほうが安全です。
相談が集中する商材と入口
相談が集中するのは、化粧品・健康食品・サプリメントといった、継続使用が前提の消耗品です。入口の大半はSNS広告や動画広告で、「初回1,980円」のようなわかりやすい価格が、申込みの背中を押しています。
現場の取材では、SNS広告から1,980円のファンデーションを申し込んだ60代の顧客の事例が紹介されました。1か月後に2品が届き、約1万2,000円を請求されたという内容です。
顧客は「わかるように書いてあれば考えた」と話しており、悪意の有無ではなく、見え方の問題として相談に至っています。
いいかえると、広告の価格訴求が強い商材ほど、最終確認画面での打ち消しが強く求められます。LPの勢いをそのまま確定ボタンまで持ち込む設計は、相談の火種を自ら増やしているといえます。
相談が増えると売上より先に止まるもの
相談件数が増えた事業者に先に起きるのは、売上減ではなく決済とカスタマーサポートの逼迫です。チャージバックや返金対応が増え、電話とメールの一次対応に担当者の時間が取られます。
そのため、解約を申し出た顧客に対応しきれず、電話がつながらない状態が続くと、今度は行政指導や処分の対象に変わります。2024年5月から12月の国の行政処分4案件のうち、3案件は最終確認画面の表示義務違反を含んでいました。
表示の不備は「後で直せばよい小さな問題」ではなく、業務停止命令という形で事業そのものを止めるリスクです。まずは自店の申込フローが、相談を生みやすい形になっていないかを確認するところから着手してみてください。
関連記事:特定商取引法に基づく表記の書き方|EC必須項目と改正対応
改正特商法が定期購入に求める表示義務の全体像
法務に聞くと条文の話になり、カート会社に聞くとテンプレートの話になる、という経験をした担当者は多いでしょう。定期購入の法対応で迷うのは、守るべきルールの全体像が一枚で見えないからです。
2022年6月に施行された改正特定商取引法は、定期購入に関して大きく3つの柱を持っています。申込段階の表示義務、解約を妨げる行為の禁止、誤認して申し込んだ消費者の取消権です。
申込段階の表示義務(12条の6)
1つ目の柱は、インターネットの申込画面や申込用紙に、契約の重要事項を表示する義務です。対象は「事業者が用意した手続きに従って消費者が申し込む」場面で、最終確認画面がその中心になります。
表示すべき項目は、分量・販売価格と送料・支払時期と方法・引渡時期・申込期間・解約条件の6つです。くわえて、表示した内容について消費者を誤認させる表示も禁止されています。
解約妨害の禁止(13条の2)と取消権(15条の4)
2つ目の柱は、解約を妨げる行為の禁止です。たとえば、記載した電話番号に一切つながらない、折り返すと言って連絡しないという状態が該当します。
表示した解約方法が実際には機能していないため、不実の記載として扱われます。意図的かどうかは問われません。
3つ目の柱は、消費者の取消権です。表示義務に違反した画面や誤認させる表示を見て申し込んだ消費者は、その申込みを取り消せます。
取消しが認められると、事業者は受け取った代金を返す立場になり、送った商品の代金を請求できません。表示の不備は行政処分だけでなく、売上そのものが無かったことになるリスクを抱えています。
カート会社やモール任せにできない範囲
ShopifyやBASEのようなカートや、定期購入アプリを使っていれば、最終確認画面の枠組み自体は用意されています。しかし、初回価格の見せ方、コース名、解約条件の文言、受付時間の記載は、事業者が自分で設定する項目です。
フルスクラッチで構築したサイトでは、最終確認画面の改修に開発工数がかかるため、法対応が後回しになりがちです。モールに出店している場合も、自店舗のカート最終画面が6項目を満たしているかの確認は、モールではなく出店者が負います。
罰則の重さを数字で押さえる
表示が不十分な場合は、業務改善の指示や最長2年の業務停止命令の対象です。虚偽や誘導的な表示には、3年以下の懲役または300万円以下の罰金が科され、法人には1億円以下の罰金が定められています。
実際の処分では、美容・スキンケア商材の事業者への3か月から9か月の業務停止命令が目立ちます。電話のみの受付でつながらない状態が数か月続いた事例では、6か月の業務停止が確認されました。
条文の番号を覚える必要はありません。「載せる・隠さない・解約させる」の3つを守れているかを、自店の画面で確かめてみてください。
最終確認画面に必ず載せる6項目と書き方
カート会社のテンプレートを使っているから大丈夫、と思っていた事業者ほど、初回価格の見せ方で引っかかります。最終確認画面は「注文を確定するボタンがある画面」のことで、ここに6項目が揃っているかが審査の起点です。
6項目とは、分量・販売価格と送料・支払時期と方法・引渡時期・申込期間・解約条件を指します。項目名を並べるだけでは足りず、定期購入ならではの書き方があるため、順に確認していくのが近道です。
「最終確認画面」がどの画面を指すかを先に確定する
複数のカートやアプリを併用していると、どの画面が法律上の最終確認画面に当たるかで迷う担当者がいます。判断の基準は単純で、顧客が「注文を確定する」操作を行う直前に表示される画面です。
LPに申込フォームと確定ボタンが一体化している1ページ型の場合は、そのフォーム周辺が最終確認画面に該当します。入力画面と確認画面が分かれている場合は確認画面側が対象になるため、入力画面だけに条件を書いても表示したことにはなりません。
分量:回数・期間・自動更新の有無まで書く
単品販売なら数量だけで済みますが、定期購入では各回の数量、お届け回数、契約期間、自動更新の有無をセットで示します。「毎月1袋をお届け、4回目まで継続、5回目以降は解約手続きまで自動継続」のように、終わり方まで書くのが基本です。
総分量の目安も省かないでください。4回縛りなら「合計4袋」と計算済みの数字で書くと、読み手が頭の中で掛け算をする必要がなくなります。
販売価格:初回と2回目以降を同じ強さで
価格で最も多い不備は、初回価格を大きく、2回目以降の価格を小さく表示するパターンです。ガイドラインは表示の位置・形式・大きさ・色調を総合的に見るため、初回だけ赤字で巨大に書く設計は誤認表示と判断されやすくなります。
対策としては、「初回1,980円、2回目以降は毎回5,980円、4回合計19,920円(税込・送料込)」と一文で並べる形が現実的です。初回価格・継続価格・支払総額の3つを同じ文字サイズで隣り合わせに置くと、後から「知らなかった」と言われにくくなります。
支払時期・方法と引渡時期
各回の請求タイミングと決済手段を書き、2回目以降の引き落とし日が初回と異なるなら、その違いも明記します。クレジットカードの自動課金なら「毎回発送日に課金」のように、消費者が家計の予定を立てられる粒度が目安です。
引渡時期は初回の発送目安だけでなく、2回目以降の配送間隔も必要です。「初回は注文から3営業日以内に発送、2回目以降は30日ごとに発送」と書けば、次回の商品がいつ届くかを顧客が予測できます。
申込期間と解約条件
申込期間は、キャンペーンに期限があるときだけ必要な項目です。ただし「今だけ」「期間限定」と書く場合は、具体的な日付か残り日数を示さないと、期間があるのに内容が不明という状態に陥ります。
解約条件は6項目の中で最も処分に結びつきやすい項目です。解約できる時期、方法、窓口、締切(次回発送の何日前まで)、違約金や差額請求の有無を、最終確認画面に直接書きます。
ガイドラインでは、詳細をリンク先や別画面で見せる参照方式も原則として認められています。しかし、解約手段を電話に限る、受付時間を限定するといった制約がある場合は、最終確認画面そのものへの記載が求められるため注意が必要です。
合格ラインの文面例
6項目を一度に書くと長くなりそうですが、実際には150字程度の1ブロックに収まります。以下は、4回継続が条件の定期コースを想定した文面の例です。
価格と回数は先頭に置きます。文面は「本コースは定期購入です(初回1,980円、2回目以降は毎回5,980円、4回目まで継続、4回合計19,920円・税込送料込)」が目安でしょう。
時期と自動更新は、「初回は注文から3営業日以内、2回目以降は30日ごとに発送、各回の発送日にカードへ課金」と続けます。そのあとに「5回目以降は解約のご連絡まで自動継続」と自動更新の一文を添えてください。
解約条件は、「解約・配送間隔の変更は次回発送日の7日前までにマイページまたは電話(番号・平日10〜18時)で受付」と書きます。縛りがあるなら「4回目までの解約は初回割引分の差額を請求」の一文を続けてください。
差額請求や締切のように顧客に不利な条件ほど、省略せずに書くことが結果的に紛争を減らします。隠した条件は、解約時にほぼ例外なく表面化するからです。
この3段落を確定ボタンの直上に、本文と同じ文字サイズで置けば、6項目はすべて満たせます。文面は長く感じるかもしれませんが、スマホの1画面に収まる分量です。
スクロールと折りたたみの扱い
6項目を揃えても、画面の下のほうに流し込むだけでは不十分です。何度もスクロールしないと条件にたどり着かない配置は、スクロールバーがあっても読み飛ばしを誘発する表示とされています。
注文確定ボタンの直前に、6項目を1つのブロックにまとめて置く配置が無難です。アコーディオンや注釈の中にしか条件が無い状態は、表示したことになりません。
関連記事:定期購入LP設計で高CVRを出す方法|構成とコピーの実践手順
誤認表示と判断されやすいNGパターン
「お試し」「縛りなし」「いつでも解約OK」の3つは、定期コースのLPで反応が取れる言葉です。しかし、反応が取れる言葉ほど、改正特商法では誤認表示と判定されやすい傾向があります。
国民生活センターが2026年4月に公表した事例でも、トラブルの入口は広告や申込画面の言葉遣いでした。ここでは、処分事例と相談事例に共通するNGパターンを4つに整理します。
「お試し」「トライアル」を強調した定期コース
本当に1回で終わる商品なら「お試し」と書いて問題ありません。一方で、初回だけ安い定期コースに「お試し」「トライアル」を強調して使うと、1回限りと誤認させる表示に該当します。
ガイドラインの画面例では、「初回無料」を強調した定期コースについて、コース名を「定期購入コース(初回分無料)」と変える修正例が示されました。商品名やコース名の中に「定期」の2文字を入れるだけで、誤認の多くは防げます。
「縛りなし」なのに解約するまで続く設計
「定期縛りなし」と表示しながら、実際には解約手続きをしない限り毎月届く契約は、2025年以降に相談が増えたパターンです。回数縛りが無いことと、自動継続が無いことは別の話だからです。
この場合は、「回数の縛りはありませんが、解約のご連絡をいただくまで毎月お届けします」と自動継続の事実を書き添えます。縛りなしという言葉だけを大きく見せる設計は避けるほうが無難でしょう。
「いつでも解約可能」と実際の条件のずれ
「いつでも解約可能」と目立たせておきながら、実際には次回発送の10日前までという締切や、初回のみ受け取った場合の差額請求があるケースです。この組み合わせは、表示事項について誤認させる表示の典型例として挙げられています。
締切や差額請求があるなら、「いつでも」という言葉は使わず、条件そのものを書きます。2024年以降の国の処分11案件のうち10案件は、誇大広告と最終確認画面の表示違反がセットで適用されました。
広告と最終確認画面の食い違い
広告では「2回目以降も同じ価格」と見える表現を使い、最終確認画面で初めて2回目以降の値上がりを示す構成も、誤認表示と判断される典型です。最終確認画面が合格でも、広告がそこへ至る誤認を作っていれば、誇大広告の規定が別に適用されます。
2回目を受け取らない場合に高額な手数料がかかるのに、広告にも最終確認画面にもその旨が無かった事例は、2025年の処分で問題視されました。広告の訴求と確定画面の条件を同じ担当者が毎回突き合わせる体制が、最も確実な予防策です。
申込途中の「さらにお得なご案内」
単品を選んだ顧客に、注文確認画面で「さらにお得なご案内」として別の定期コースを提示し、承諾すると契約内容が定期に切り替わる仕組みがあります。2026年に入って目立つのが、この申込途中の条件変更です。
切り替え自体が違法ではありませんが、切り替え後の最終確認画面で6項目をあらためて表示しなければ、元の注文との違いが隠れたままです。デフォルトで定期コースが選択された状態も、ガイドラインで望ましくない例とされているため、初期値は単品か未選択にしておくと安心でしょう。
関連記事:EC景品表示法のNG表現と注意点|違反になりやすい表示例
解約手続きの設計|申込みと同じ手軽さで解約できる導線にする
「解約は電話のみ、受付は平日10時から17時」という一文がLPの奥にあるだけで、解約希望の顧客はつながらない電話に苛立ちます。その苛立ちは、そのまま消費生活センターへの相談に変わるでしょう。
解約導線の設計は、法対応であると同時にカスタマーサポートの負荷設計でもあります。申込みがスマホから1分でできるなら、解約もスマホから数分で終わる形に揃えるのが2026年の基準です。
受付手段は複数用意し、実際につながる状態にする
行政指導6案件のうち3案件は、電話で解約を受け付けているにもかかわらず、確実に連絡が取れる電話番号を広告に表示していなかったケースでした。番号を載せるだけでなく、営業時間内に実際につながることが条件です。
現実的な構成は、マイページからの解約フォームを主軸にして、電話とメールを補助に置く形でしょう。電話しか無い場合は、発送前の繁忙期に回線が埋まり、意図せず解約妨害の状態を作ってしまいます。
マイページから解約画面までの階層を最小にする
解約画面にたどり着くまでに5画面以上の引き止めを挟む設計は、2026年のダークパターン規制案で「申込みより過度に複雑な解約手続」として名指しされました。現時点の特商法でも、表示した解約方法が実際には機能しない状態は不実の記載として扱われます。
目安として、マイページのトップから解約完了まで3画面以内に収めます。引き止めの案内を出すなら1画面にまとめ、「このまま解約する」ボタンを同じ画面に置いてください。
LINE・チャットで解約を受ける場合の注意点
LINE公式アカウントやチャットで解約を受け付ける事業者も増えましたが、会話形式には固有の落とし穴があります。自動応答が「解約はお電話で」と案内し続け、有人対応に切り替わらないまま放置される状態は、電話がつながらない状態と同じ評価を受けるからです。
チャットで受けるなら、「解約」というキーワードで有人対応かフォームへ即時に分岐させ、受付完了のメッセージを当日中に返します。LINEのブロックや友だち解除を解約とみなすかどうかも、あらかじめ規約と最終確認画面に書いておくと認識のずれを防げるでしょう。
締切と差額請求は申込時に伝え、解約時にも再掲する
「次回発送の7日前まで」という締切は、最終確認画面に書いたうえで、マイページの解約画面にも次回発送日とセットで表示します。顧客が締切を過ぎてしまう原因の大半は、締切を忘れたのではなく、次回発送日を知らないことだからです。
初回のみ受け取った場合の差額請求や、2回目を受け取らない場合の手数料も、申込時に明示していなければ請求の根拠を失います。解約時に初めて金額を知らせる運用は、2025年の処分事例で最も重く見られた類型の1つです。
解約を受けた後の処理と顧客への返答
解約の申出を受けたら、受付日と次回発送の停止を当日中に処理し、顧客に「いつの発送分から止まるか」を明記した返答を送ります。返答が無いまま次回分が発送されると、顧客側は解約されていないと受け取り、相談や決済会社への異議申立てに進みやすいからです。
締切を過ぎた申出については、次回分までお届けして以降を停止する旨を伝え、締切の根拠として最終確認画面の記載を示します。感情的な対立を避けるには、締切後でも1回限りの例外として停止に応じる裁量を、現場に持たせておくほうが総コストは下がるでしょう。
解約対応を記録し、応答時間を数値で管理する
電話での解約申出には、受付日時・担当者・処理結果を記録し、メールやフォームなら受付の自動返信を即時に返します。記録が無いと、「連絡したのに解約されていない」という申し立てに反論できません。
管理指標としては、解約申出から処理完了までの平均時間と、電話の応答率を月次で追います。応答率が80%を下回る月が続くなら、フォーム解約への誘導を強めるか、受付時間を広げる判断が必要でしょう。
行政処分の実例から学ぶ「事業が止まる理由」
「うちは悪質な業者ではないから関係ない」と考えている担当者ほど、処分事例を読むと驚くはずです。処分を受けた事業者の多くは、特別な詐欺を働いたわけではなく、画面の一部に表示が無かっただけだからです。
2024年3月から2025年11月までに、国による定期購入関連の処分は11案件に上りました。改正法の施行から3年を経ても、執行の手は緩んでいません。
処分に至るまでの流れを知っておく
行政処分は突然下されるわけではなく、消費生活センターへの相談の蓄積、消費者庁や都道府県からの注意喚起や問い合わせ、行政指導という段階を経ます。初期の問い合わせ段階で画面を修正し、修正の記録を提出できれば、処分に進まずに済むケースが大半です。
そのため、監督官庁からの連絡を受ける窓口と、修正を即日判断できる責任者を社内で決めておく価値があります。連絡を受けてから担当者を探し始めるようでは、回答期限に間に合いません。
解除に関する事項を最終確認画面に載せていなかった
最も単純で、最も多い類型です。解約条件そのものは利用規約に書いてあったものの、最終確認画面には表示が無く、業務停止命令と代表者への業務禁止命令が3〜9か月の期間で出されました。
利用規約へのリンクがあれば足りると考えていた事業者は、ここで足をすくわれます。解約方法に制約があるなら、最終確認画面への直接記載が求められるからです。
処分を受けた事業者に共通する社内事情
処分事例を読み解くと、法務担当がいない、LPの制作を外部に委託して確認していない、広告運用とCSが別会社で情報が分断されている、という共通点が浮かびます。画面を直す権限を持つ人と、相談の増加に最初に気づく人が別の場所にいるため、対応が遅れるわけです。
年商5億円未満の事業者でも、広告・LP・CSの3者が月1回同じ表で相談件数と画面変更を確認する場を持つだけで、この分断は解消できます。専任の法務を置けなくても、確認の場があれば問題の芽は早い段階で見つかるからです。
チャットボットの申込画面で一部しか表示していなかった
LINEやチャット形式の申込フローで、契約解除に関する事項の一部だけを表示し、全項目を映像面に出していなかった事例も処分対象になりました。会話形式のUIは、6項目を一画面に揃えにくい構造的な弱点を持っています。
チャット申込を使うなら、確定ボタンの直前で6項目をまとめたカードを表示する設計が必要です。UIが新しいかどうかに関係なく、審査の基準は「注文確定の直前に何が見えていたか」に尽きるといえます。
電話がつながらない状態を数か月放置した
解約受付を電話に限定しながら、回線が常に話し中で数か月にわたりつながらなかった事業者には、6か月の業務停止命令が出ました。意図的に止めていたのか、単に人手が足りなかったのかは、処分の重さに影響しません。
処分は消費者庁のサイトで社名入りで公表され、検索結果にも長く残ります。業務停止そのものより、公表後に決済代行会社や広告媒体との取引が止まる二次的な影響のほうが、事業にとっては深刻でしょう。
自店の申込フローを1日で監査する手順
法律の解説を読み終えても、自店の画面が合格かどうかは誰も教えてくれません。監査は外部に頼むと数十万円かかりますが、担当者が半日あれば一次点検は自力で終わります。
ここでは、EC担当者が1日で実行できる監査の手順を4ステップに分けて示します。必要なものは、スマホとPC、スクリーンショットを保存するフォルダ、テスト用のクレジットカードだけです。
ステップ1:顧客として申込みを最後まで進める
最初にやるべきは、広告のリンクから入って注文確定の直前まで、顧客と同じ順路で進むことです。LPのファーストビュー、商品選択、カート、最終確認画面の順に、スマホとPCの両方でスクリーンショットを撮ります。
この作業は、自社の画面を毎日見ている担当者ではなく、別部署の社員や家族に頼むと精度が上がります。初めて見る人が「これは定期購入だ」と気づいた画面がどこかを記録しておくと、誤認の起きやすさが客観的にわかるでしょう。
広告からの入口ごとに点検する
同じ商品でも、Instagram広告用、検索広告用、アフィリエイト用でLPが分かれている事業者は、入口ごとに申込フローが違います。点検は代表的なLP1本ではなく、月間の申込数が多い順に上位3本の入口で行ってください。
特にアフィリエイト経由のLPは、制作を外部に委ねたまま内容を確認していないケースが目立ちます。広告主である事業者が表示の責任を負うため、提携先が作ったLPも自店の画面と同じ基準で採点しなければなりません。
ステップ2:最終確認画面を6項目で採点する
撮影した最終確認画面を見ながら、分量・価格と送料・支払時期と方法・引渡時期・申込期間・解約条件の6項目を1つずつ探します。項目が「ある」だけでなく、確定ボタンから見える位置にあるか、初回と2回目以降が同じ強さで書かれているかまで採点してください。
採点は3段階で十分です。確定ボタンの近くに同じ大きさで書いてあれば2点、リンク先や画面下部にあれば1点、どこにも無ければ0点とします。
0点の項目があれば、公開中の画面でも即日修正の対象です。1点の項目は、次のLP更新までに確定ボタンの近くへ移します。
ステップ3:解約を実際にやってみる
テスト注文を1件入れ、マイページから解約を試みます。解約画面に到達するまでの画面数、所要時間、締切と次回発送日が表示されているか、引き止め画面に「このまま解約する」ボタンがあるかを記録してください。
電話を受付手段にしているなら、営業時間内に外線から3回かけて、つながるまでの時間を測ります。1回でもつながらなければ、回線数か受付体制の見直しが必要なサインです。
監査で見つかりやすい5つの見落とし
一次点検で頻繁に見つかる不備は、傾向が決まっています。1つ目は、PCでは問題ないのにスマホでは6項目が折りたたまれて見えないケースで、スマホ経由の申込みが8割を超える現在、スマホ側の画面が実質的な審査対象です。
2つ目は、クーポン適用後に価格表示が初回分だけ更新され、2回目以降の価格と総額が古い金額のまま残るケースです。3つ目は、LPを改修した際に「定期」の文言がコース名から消えてしまう事故といえます。
4つ目は、解約画面には締切が書いてあるのに、次回発送日がどこにも出ていない状態で、顧客は締切を計算できません。5つ目は、電話番号は載っているが受付時間の記載が無く、時間外にかけた顧客が「つながらない」と相談するパターンです。
いずれも修正自体は数時間で終わりますが、見つけるには顧客と同じ順路をたどる以外の方法がありません。監査のたびに5項目を先に確認すると、点検時間を短縮できます。
ステップ4:修正と記録を仕組みに組み込む
見つかった不備は、確定ボタン周辺の表示、コース名、解約導線の順に直します。修正後の画面は日付入りでスクリーンショットを保存し、価格やコース条件を変えるたびに同じ手順を踏むルールにしておくと、担当者が替わっても品質が落ちません。
監査の頻度は、価格改定やキャンペーン開始のたびに加えて、四半期に1回の定期点検が目安です。画面は一度直せば終わりではなく、LPを更新した翌日に注釈だけが消えていることは現場で頻繁に起きます。
監査結果を経営層に報告する形
監査が終わったら、6項目の採点表、解約導線の画面数と所要時間、電話の応答結果、修正の優先順位の4点を1枚にまとめて経営層に報告します。法律の条文ではなく、「0点の項目が2つあり、放置すると業務停止命令の対象になる」という事業への影響で伝えると、修正の予算は通りやすいでしょう。
修正後は、相談件数と2回目の受取率の変化を同じ表に追記し、法対応が売上の安定につながったことを数字で示してください。この積み重ねが、次の規制改正のときに社内の理解を得る土台になります。
2026年以降のダークパターン規制で変わること
「今の画面は改正特商法に合わせて直したばかりなのに、また規制が変わるのか」と、2026年9月のニュースを見て感じたEC担当者もいるでしょう。規制の全体像を知れば、やるべきことは現行法の延長線上にあるとわかります。
消費者庁の検討会は2026年1月に議論を始め、8月に中間取りまとめ案を示し、9月10日に中間取りまとめを公表しました。特定商取引法と消費者契約法の改正を視野に入れ、翌年の通常国会への法案提出を目指す方針です。
規制対象として挙がった5つの類型
中間取りまとめで名指しされたのは5類型です。支払総額や契約期間の不明瞭な表示、口コミや在庫に関する虚偽表示、威迫的な文言での申込促進、確認画面後のアップセルや条件変更の隠蔽、解約手続きの複雑化が並びます。
定期購入のEC事業者に直接関わるのは、1つ目・4つ目・5つ目でしょう。いずれも、本記事でここまで整理してきた現行法の論点と重なります。
特に解約については、「申込み手続きと同等以上の利便性」という考え方が示され、電話やチャットを含む一連の手続きが対象になります。現行法が「表示した方法が機能すること」を求めていたのに対し、改正後は「申込みと同じ手軽さ」が求められる方向です。
SNSやチャットでの勧誘も論点に入った
中間取りまとめでは、画面上の表示だけでなく、SNSのダイレクトメッセージやチャットを通じた勧誘も検討対象に含まれました。LINEで個別に定期コースを案内し、会話の中で申込みを完結させる売り方は、今後は通常のネット申込みと同じ表示義務を求められる可能性があります。
現時点で違法になったわけではありませんが、チャット経由の申込みにも最終確認のカードを出す設計に寄せておくと、改正後の改修が最小で済みます。会話ログを保存し、顧客がどの条件を見て承諾したかを後から示せる状態にしておくことも、紛争時の備えとして役立つはずです。
いま先回りしておく価値がある対応
規制内容は確定しておらず、適法なパターンを示すガイドラインも今後の公表とされています。しかし、方向性は現行のガイドラインの延長線上にあり、先回りして損をする項目はほぼありません。
具体的には、支払総額を計算済みの数字で1か所に置く、注文確定後のアップセルは元の注文との差分を明示する、解約を3画面以内で完結させる、の3点です。この3点は現行法の処分事例とも重なるため、2026年中に済ませておくと二度手間になりません。
関連記事:ECサブスク・定期購入の解約率を改善する方法|チャーンレートの計算から継続率を上げる施策まで
表示ルールを守りながら継続率を落とさない運用の工夫
「条件を正直に全部書いたら、CVRが落ちて定期コースが成り立たない」という反論は、法対応を進める担当者が経営層からよく受ける言葉です。この懸念は正当に見えますが、数字で見ると前提が違います。
実際には、条件を隠して獲得した顧客は2回目で解約や拒否に回り、返金とCS対応で初回の利益を食いつぶします。現場では、法対応の後に累計売上が伸びる逆の結果も珍しくありません。
定期コースの採算は、初回の申込数ではなく、2回目・3回目まで続いた顧客の累計購入額で決まります。表示ルールを守ることは、この累計を伸ばすための前提条件といえます。
「定期便」と「1回のみ」を最初から分けて選ばせる
化粧品の大手通販では、申込画面の最初で「定期便」と「1回のみ」を明確に分ける設計が紹介されています。定期便を選んだ顧客には、配送頻度を自分で宣言してもらう画面を挟む方式でした。
半年でいくらかかるかという総額も、目立つ位置に表示しています。テクニックで購入を促すのではなく、使いやすいサービスとして案内する方針が背景にありました。
この設計は一見CVRを下げそうですが、誤認で入ってくる顧客を最初から除外するため、2回目以降の継続率と顧客単価は安定します。定期コースの収益は初回CVRではなく、3回目まで続いた顧客の割合で決まるからです。
配送間隔の変更とスキップを解約の手前に置く
解約を申し出る顧客の一定数は、商品が余っているだけで、使い続ける意思はあります。配送間隔を30日から60日に変える、次回を1回スキップする、という選択肢を解約ボタンの隣に並べると、解約せずに続ける顧客が残るからです。
ただし、この選択肢は解約を妨げるためではなく、顧客の都合に合わせるための機能です。スキップを選んでも解約の締切や条件が変わらないこと、スキップ後にいつでも解約できることを、同じ画面に明記してください。
初回割引の代わりに「続ける理由」を設計する
初回99円のような極端な割引は、誤認を誘う表示と判定されやすいうえ、価格目当ての顧客を集めます。初回割引を控えめにし、2回目に使い方のガイドを同梱する、3回目に継続特典を付けるなど、続けるほど得をする設計に切り替える事業者が増えました。
無料や低価格のモニターで見込み客を集め、その後に定期コースを案内する2段階の売り方も、改正法と相性の良い手法です。1回目の申込みでは単品契約が成立するだけなので、誤認の余地が小さくなります。
差額請求や回数縛りを残すなら条件を揃える
回数縛りや途中解約時の差額請求は、それ自体が禁止されているわけではありません。問題になるのは、申込時に伝えていなかった、または伝え方が小さかった場合に限られます。
残すのであれば、縛り回数と差額の金額を最終確認画面に明記し、解約画面でも同じ金額を再掲します。くわえて、差額が実際の割引額を超える設定や、解約を事実上不可能にする高額な違約金は、消費者契約法で無効と判断されかねません。
差額は割引した金額の範囲内に収めるのが安全でしょう。金額の根拠を規約に書いておくと、問い合わせへの説明も一貫します。
法対応の効果を測る指標を1つ決める
表示を正直にした効果は、初回CVRだけを見ていると「下がった」としか見えません。2回目の受取率、3回目までの継続率、注文100件あたりの解約・返金に関する問い合わせ件数の3つを、画面修正の前後で比べてください。
現場では、修正後に初回CVRが1〜2割下がる一方で、2回目の受取拒否や返金が半減し、3か月後の累計売上では修正前を上回る例が報告されています。経営層への説明は、初回の申込数ではなく、顧客1人あたりの累計購入額で行うと話が早いでしょう。
解約フォームを顧客の声の収集窓口にする
解約を妨げない設計にしたうえで、解約フォームに理由を1問だけ添えると、商品改善と継続率改善の両方に使えるデータが集まります。回答は任意にし、答えなくても解約できることを明記するのが条件です。
解約理由の上位が「余っている」なら配送間隔の変更を、「効果を感じない」なら使い方の案内を、解約前の画面で一度だけ提案します。提案は1画面に収め、解約ボタンと並べて置けば、引き止めではなく選択肢の提示として受け取られるはずです。
よくある質問
Q:最終確認画面の6項目は、利用規約へのリンクで代用できますか?
A:原則として、詳細をリンク先や別画面で示す参照方式は認められています。ただし、解約手段を電話に限る、受付時間を限定するなどの制約がある場合は、最終確認画面そのものへの記載が必要です。実務上は、確定ボタンの直前に6項目をまとめて表示し、リンクは補足に使う形が安全です。
Q:顧客が商品の受取拒否をした場合、定期契約は解約されたことになりますか?
A:受取拒否だけでは解約の意思表示にならず、契約は続いたままという扱いが一般的です。ただし、受取拒否が続く顧客に請求を重ねると紛争になりやすいため、受取拒否を検知した時点で解約の意思を確認する連絡を入れる運用が現実的です。確認の記録を残しておくと、後の申し立てにも対応できます。
Q:ネット通販の定期購入にクーリングオフは適用されますか?
A:通信販売はクーリングオフの対象外です。その代わりに、事業者が返品特約を表示していない場合は、商品到着から8日以内の返品に応じる必要があります。返品の可否・条件・送料負担を広告と最終確認画面に明記しておくと、無用な返品を避けられます。
Q:解約の受付を電話のみにするのは違法ですか?
A:現行法では、電話のみの受付そのものは禁止されていません。ただし、その旨を最終確認画面に直接表示し、記載した番号に営業時間内に実際につながる状態を保つ必要があります。2026年の規制案では申込みと同等以上の利便性が求められる方向のため、フォーム解約の併設を検討する時期です。
Q:ShopifyやBASEなどのカートを使っていれば、表示義務は自動的に満たされますか?
A:カート側が最終確認画面の枠組みを用意していても、初回価格や解約条件の文言は事業者が設定する項目です。定期購入アプリを追加した場合は、アプリが表示する内容と自社の規約が食い違っていないかも確認してください。モール出店でも、自店舗のカート最終画面が6項目を満たしているかの確認は事業者の責任です。
Q:表示の不備を消費者から指摘されたら、まず何をすべきですか?
A:指摘を受けた注文については、取消しや返金に速やかに応じるのが先決です。そのうえで、同じ画面から申し込んだ他の顧客にも同じ不備が及ぶため、画面を即日修正し、修正前後のスクリーンショットを日付入りで保存します。相談件数が増える前に手を打つことが、行政指導を避ける近道です。
Q:条件をすべて正直に書くと、定期コースのCVRはどのくらい下がりますか?
A:初回CVRは下がる場合がありますが、その分だけ2回目以降の解約と返金が減るため、3回目までの継続率で見ると改善するケースが現場では報告されています。定期コースの採算は初回の申込数ではなく、継続した顧客の累計購入額で判断するのが現実的です。価格を正直に書いたうえで、続ける理由を設計するほうが収益は安定します。
まとめ
定期購入の特商法対応は、最終確認画面に6項目を確定ボタンの直前で揃え、申込みと同じ手軽さで解約できる導線を用意することに尽きます。2026年のダークパターン規制も同じ方向を向いているため、本記事の監査手順で自店の画面を点検するところから始めてみてください。
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