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EC顧客分析のRFM分析|セグメント別施策の設計手順

ECサイトの売上を安定的に伸ばすには、新規顧客の獲得だけでなく既存顧客の購買行動を正確に把握し、セグメントごとに打ち手を変える必要があります。顧客の購買データが蓄積されているにもかかわらず、全顧客に同じメルマガを配信し、同じクーポンを配布している状態は、売上機会の取りこぼしにつながります。

RFM分析は、最終購入日(Recency)・購入頻度(Frequency)・購入金額(Monetary)の3指標で顧客をグループ分けする手法です。EC事業との相性が高く、購買データさえあればExcelやスプレッドシートで実践できます。

この記事では、EC事業者がRFM分析をゼロから実装するための手順を、データの準備方法からセグメント別の施策設計、運用時の注意点まで一貫して解説します。「顧客データはあるがどう活用すればいいかわからない」「リピート施策を打っているが費用対効果が見えない」といったご相談があれば、ぜひお気軽にご相談ください。▶ サービス紹介資料をダウンロードする(無料)

目次

RFM分析とは(EC事業者が顧客データを活用する基本フレーム)

RFM分析の定義と3つの指標

RFM分析とは、顧客の購買履歴データを「Recency(最終購入日)」「Frequency(購入頻度)」「Monetary(累計購入金額)」の3軸でスコアリングし、顧客をセグメントに分類する分析手法です。1960年代にダイレクトマーケティングの分野で体系化され、現在ではEC・通販業界で広く活用されています。

Recencyは「最後に購入した日からの経過日数」を測定します。直近の購入が近いほど、再購入の確率が高いとされています。Frequencyは「一定期間内に何回購入したか」を数値化します。購入頻度が高い顧客ほど、ブランドへの定着度が高いと判断できます。

Monetaryは「一定期間内の累計購入金額」です。金額が大きい顧客は、客単価の高い商品を購入する傾向があるか、頻繁にまとめ買いをしているかのいずれかに該当します。この3指標を組み合わせることで、顧客一人ひとりの「自社にとっての価値」を定量的に評価できるようになります。

RFM分析の強みは、3指標の「組み合わせ」で顧客像を浮かび上がらせる点にあります。たとえば、Recencyが高くFrequencyが低い顧客は「最近買ったばかりの新規顧客」、Recencyが低くFrequencyが高い顧客は「かつての常連が離脱しかけている状態」というように、1つの指標だけでは見えない顧客の状態を3軸で立体的に把握できます。

ECサイトとRFM分析の相性が高い理由

実店舗の場合、顧客の購買履歴を正確に把握するにはポイントカードや会員登録が前提になります。一方、ECサイトでは注文データがシステム上に自動で蓄積されるため、特別な準備なしに分析に必要なデータが揃います。顧客ID・注文日・注文金額・注文回数といったRFM分析に不可欠な項目が、カートシステムやモール管理画面からCSVエクスポートで取得できます。

Shopifyでは管理画面の「ストア分析」から「RFMに基づくお客様分析」レポートを標準機能として利用できます。楽天市場のRMSでも、顧客台帳からリピーター分析データを取得できます。分析基盤がすでに整っている点が、EC事業者にとってRFM分析のハードルを下げています。

さらに、ECサイトでは施策の実行環境もRFM分析との親和性が高い構造になっています。セグメントごとにメルマガの配信リストを分けることも、クーポンコードを出し分けることも、カートシステムやメール配信ツールの標準機能で対応できます。「分析→施策→効果測定」の一連の流れをデジタル上で完結できるため、実店舗中心のビジネスと比べてPDCAサイクルの回転速度が速い点もEC事業者にとっての利点です。

RFM分析で解決できるEC事業者の課題

EC事業者がRFM分析に取り組むことで解決に近づく課題は主に3つあります。1つ目は「全顧客に同じ施策を打っている問題」です。優良顧客と新規顧客に同じクーポン率を適用すると、優良顧客の利益を不必要に削り、新規顧客には割引率が足りずに再購入に至らないという二重の損失が発生します。

2つ目は「休眠顧客の放置」です。過去に複数回購入していたのに最近は購入がない顧客は、競合に流れている可能性が高いグループです。RFM分析で「Recencyが低く、FrequencyとMonetaryが高い」顧客群を抽出すれば、離脱リスクの高い層にピンポイントで復帰施策を打てます。

3つ目は「施策の費用対効果が見えない問題」です。メルマガ配信やクーポン配布のコストは一律にかかりますが、全員に配信すると費用が膨らむ割に反応率が低くなります。セグメントごとに施策を分けることで、限られた予算を反応率の高い層に集中投下できます。

関連記事:ECリピート率の改善施策|F2転換率から実行ロードマップまで

RFM分析の3指標と閾値の設定方法

Recency(最終購入日)の閾値設計

Recencyは「最後に購入した日から今日までの日数」で計算します。日数が短いほどスコアが高く、再購入の可能性が高い顧客として分類されます。閾値の設定は業種の購買サイクルに合わせて決めることが原則です。

食品・日用品ECでは購買サイクルが短いため、30日以内をスコア5、31〜60日をスコア4、61〜90日をスコア3、91〜180日をスコア2、181日以上をスコア1とする設計が実務上の目安になります。アパレルECでは購買サイクルが長いため、60日以内をスコア5、61〜120日をスコア4、121〜180日をスコア3、181〜365日をスコア2、366日以上をスコア1とする設計が妥当です。

雑貨・インテリアECのように購買頻度が低い業種では、90日以内をスコア5とし、以降90日刻みでスコアを下げていく設定が現実的です。閾値を決める際に迷った場合は、自社の注文データから「リピート購入が発生する平均日数」を算出し、その日数をスコア4と5の境界に設定すると実態に即した分類ができます。

Recencyの閾値は「固定値」で運用するのが基本ですが、季節変動の大きい業種では注意が必要です。たとえば、ギフト需要が12月に集中する食品ECの場合、1月時点では全顧客のRecencyスコアが一時的に高くなり、3月時点では急落するという偏りが生まれます。この問題に対処するには、季節調整をかけるか、前年同月比でRecencyの変動を追跡するという方法が考えられます。ただし、初めてRFM分析を導入する段階では固定値の閾値で十分に機能するため、季節調整は2回目以降の更新時に検討すれば問題ありません。

Frequency(購入頻度)の閾値設計

Frequencyは「対象期間内に何回購入したか」をカウントします。対象期間は通常12か月(直近1年間)に設定しますが、購買サイクルの長い業種では24か月を対象にすることもあります。

EC事業者の多くは「1回のみ購入」の顧客が全体の60〜70%を占めます。この1回購入者をさらに細かく分けてもセグメントとしての差が出にくいため、スコア1は「1回購入」に固定し、スコア2以降でリピート回数に応じた分類を行うのが実務的です。

一般的な設定例としては、1回をスコア1、2回をスコア2、3〜4回をスコア3、5〜9回をスコア4、10回以上をスコア5とする方法があります。ただし、サブスクリプション型や定期購入が中心のECでは購入回数が自動で加算されるため、定期購入分を除外して「追加購入・単発購入」のみでFrequencyを算出する工夫が求められます。

Frequencyの閾値を設定する際は、自社のリピート率のデータを先に確認しておくと精度が上がります。EC業界全体の平均リピート率は概ね30〜40%前後とされていますが、業種や商品特性によって幅があります。自社のリピーター比率が平均より低い場合は、2回購入の時点でスコア3を付与するなど、リピーターを高めに評価する設計が有効です。逆にリピート率が高い事業では、スコアの差別化が利きやすいため、購入回数の閾値を引き上げて上位層をより細かく分類します。

Monetary(累計購入金額)の閾値設計

Monetaryは「対象期間内の累計購入金額」で算出します。Frequencyと同じ対象期間で集計します。金額の分布は業種や商品単価によって大きく異なるため、自社のデータをもとに5分位(上位20%ずつ)で区切る方法が手軽です。

たとえば、ECサイトの全顧客の累計購入金額を高い順に並べ、上位20%をスコア5、次の20%をスコア4という具合に振り分けます。金額の偏りが大きい場合は、上位5%をスコア5、上位5〜15%をスコア4のように上位層を細かく区切ると、優良顧客の識別精度が上がります。

注意すべき点として、返品・キャンセル分を差し引いた「実売金額」でMonetaryを計算することが挙げられます。返品を含めた見かけの金額でスコアリングすると、実際には利益に貢献していない顧客が優良セグメントに分類されるリスクがあります。

Monetaryの閾値設定で追加的に考慮すべき要素として、送料や手数料の扱いがあります。分析の目的が「売上貢献度」の評価であれば商品代金のみで算出し、「利益貢献度」を重視するのであれば粗利ベース(売上から原価と送料を差し引いた金額)で集計する方法もあります。ただし、粗利ベースの算出は商品ごとの原価データが必要になるため、データの準備工数が増えます。初回のRFM分析では売上金額ベースで実施し、分析の精度を高めたい段階で粗利ベースに移行するというステップを踏むのが現実的です。

スコア段階の選び方(3段階と5段階の使い分け)

RFM分析のスコアは3段階と5段階のどちらを使うかで、セグメント数が大きく変わります。3段階の場合は3×3×3=27セグメント、5段階の場合は5×5×5=125セグメントになります。

顧客数が1万人未満のECサイトであれば、3段階(27セグメント)で十分です。セグメントあたりの顧客数が少なすぎると、統計的な傾向が見えにくくなり、施策の効果検証が困難になります。顧客数が1万人以上であれば、5段階(125セグメント)のスコアリングで詳細な分類が可能です。ただし125セグメント全てに個別施策を設計するのは現実的ではないため、類似セグメントをまとめて7〜10グループ程度に集約し、施策を割り当てるのが実務上の定石です。

段階数の選択に迷った場合は、まず3段階で分析を実施し、セグメントごとの顧客数と売上構成比を確認します。「優良」セグメントに属する顧客が多すぎて施策の出し分けが粗いと感じた場合に5段階に切り替えるという進め方であれば、手戻りが少なく効率的です。

RFM分析の実践手順(データ収集からセグメント化まで)

必要なデータとデータ取得元

RFM分析に必要なデータは「顧客ID」「注文日」「注文金額」の3項目です。注文回数(Frequency)は顧客IDごとに注文日をカウントすれば算出できるため、データとして必要なのはこの3項目に絞られます。

Shopifyの場合、管理画面の「注文管理」からCSVエクスポートで取得できます。楽天市場のRMSでは「受注管理」の「データダウンロード」から注文データをCSV出力します。自社ECでShopify以外のカートシステムを使っている場合も、ほぼ全てのカートで注文データのCSVエクスポート機能が搭載されています。

データ取得時に注意すべき点として、キャンセル済み・返品済み注文を除外することが挙げられます。ステータスが「完了」または「発送済み」の注文のみを対象にして分析用データを作成します。また、テスト注文や社内発注も除外が必要です。対象期間は直近12か月を標準とし、購買サイクルの長い業種(家具・家電など)では24か月に拡大して取得します。

Excelでの実装手順(5ステップ)

RFM分析はExcel(またはGoogleスプレッドシート)で実装できます。高価なBIツールやCRMは不要です。以下の5ステップで進めます。

ステップ1は「データの整形」です。CSVからエクスポートした注文データを開き、「顧客ID」「注文日」「注文金額」の3列だけを残します。注文日は日付形式に統一し、金額は数値形式に変換します。

ステップ2は「顧客別の集計」です。ピボットテーブルを使って、顧客IDごとに「最終注文日」「注文回数」「累計金額」を集計します。最終注文日はMAX関数、注文回数はCOUNT関数、累計金額はSUM関数で算出できます。

ステップ3は「Recencyの算出」です。基準日(通常は今日の日付)から最終注文日を引いて経過日数を求めます。Excel関数では「=TODAY()-最終注文日セル」で算出できます。

ステップ4は「スコアの付与」です。R・F・Mそれぞれについて、事前に決めた閾値に基づいてスコアを割り当てます。IF関数のネストで実装できます。Recencyの例としては「=IF(経過日数<=30,5,IF(経過日数<=60,4,IF(経過日数<=90,3,IF(経過日数<=180,2,1))))」の形式です。

ステップ5は「セグメントの命名」です。R・F・Mのスコアを結合して「555」「511」のようなセグメントコードを作成し、主要なセグメントに名称を付けます。CONCATENATE関数(またはアンパサンド結合)で「=R列&F列&M列」とすればセグメントコードが生成されます。

代表的なセグメント名の例を挙げると、「555」「554」「545」を「優良顧客」、「5XX(Fが2以下)」を「新規有望顧客」、「1XX(FとMが3以上)」を「休眠VIP」、「111」「112」「121」を「離脱リスク」と命名するパターンが実務的です。命名のポイントは、施策担当者がセグメント名を見ただけで「どんな顧客群で、何をすべきか」が想像できることです。

Excelでの実装が完了したら、セグメントごとの人数と売上構成比を集計して全体像を確認します。「優良顧客が全体の15%で売上の55%を占めている」「離脱リスクが全体の40%を占めている」といった数字が見えることで、限られた予算の配分先を客観的に判断できるようになります。

Shopify標準機能を使う場合の手順

Shopifyでは、管理画面の「ストア分析」>「レポート」>「RFMに基づくお客様分析」から、手動のデータ集計なしにRFMセグメントを確認できます。Shopify側でRecency・Frequency・Monetaryのスコアリングと顧客グループ分けが自動で行われるため、分析のための作業工数を大幅に削減できます。

Shopifyの標準RFM機能では、顧客を「チャンピオン」「ロイヤル」「有望」「新規」「要注意」「休眠」などの定義済みセグメントに分類します。各セグメントの顧客数と売上貢献度が一覧で表示されるため、どのセグメントに優先的にリソースを割くべきかの判断が容易になります。

ただし、Shopify標準機能の閾値設定はカスタマイズできない仕様になっています。自社の購買サイクルに合わせた閾値で分析したい場合は、注文データをCSVエクスポートしてExcelで分析するか、ECPowerやLTV-Labなどのサードパーティアプリを導入する方法があります。

関連記事:EC GA4データ分析で売上を改善する方法|計測から施策まで

セグメント別の施策設計(優良顧客・育成顧客・休眠顧客)

優良顧客(R高・F高・M高)への施策

RFMスコアが全て高い顧客は、自社ECにとって売上の柱となるグループです。EC事業者の売上の50〜80%が上位20%の顧客から生まれているというケースは珍しくありません。優良顧客への施策は「維持」が目的であり、新規獲得施策とは根本的にアプローチが異なります。

優良顧客に対して有効な施策の1つ目は「先行案内・限定アクセス」です。新商品の先行販売や限定商品の優先購入権を付与することで、他の顧客との差別化を体感してもらいます。割引率ではなく「特別感」で維持する設計が、利益率を維持しながらロイヤルティを高める鍵になります。

2つ目は「パーソナライズされたレコメンド」です。購入履歴データが豊富な優良顧客は、過去の購入傾向をもとにした商品提案の精度が高くなります。メルマガやLINE配信で「お客様の購入履歴にもとづいたおすすめ」として個別商品を提案すると、開封率・クリック率の双方で効果が出やすくなります。

3つ目は「ロイヤルティプログラムへの招待」です。会員ランク制度を導入し、優良顧客を上位ランクに位置づけることで、継続購入のインセンティブを仕組み化できます。ポイント還元率の優遇や送料無料枠の拡大など、購入頻度が高いほど得をする設計が有効です。

優良顧客への施策で注意すべき点は、値引き施策に頼りすぎないことです。すでに定期的に購入している顧客に対して割引クーポンを乱発すると、「クーポンが出るまで待つ」という購買行動を学習させてしまい、通常価格での購入意欲が低下します。優良顧客に対しては「金額の値引き」よりも「体験の質の向上」で差別化するのが、利益率を維持しながらLTVを伸ばす方法です。

関連記事:ECサイトの客単価アップ施策|クロスセル・定期購入の実践手順

育成対象顧客(R高・F低・M低〜中)への施策

最近購入したが、購入回数と金額がまだ少ない顧客は「育成対象」に分類されます。新規顧客の多くがこのセグメントに該当し、EC事業者にとってはF2転換(2回目の購入)を実現できるかどうかが成長の分岐点になります。

育成対象顧客に対してまず取り組むべき施策は「初回購入後のフォローメール」です。商品到着から3〜5日後に使い方やレビュー依頼のメールを送信し、ブランドとの接点を継続させます。初回購入後30日以内に2回目の購入が発生しない場合、その後のリピート率は大幅に低下するというデータが複数の調査で示されています。

次に有効なのは「2回目購入を後押しするクーポン」です。初回購入者限定のクーポンを、有効期限を30日程度に設定して配布します。割引率は10〜15%程度が一般的で、配布タイミングは初回注文の到着確認メールの翌日〜3日後が反応率の高い時間帯です。

もう1つの施策は「関連商品・補充品の提案」です。初回に購入した商品と関連性の高い商品をレコメンドすることで、追加購入のきっかけを作ります。消耗品であれば使い切るタイミングを想定した補充提案が有効です。

育成対象顧客への施策設計で見落としがちな点として、「初回購入の商品カテゴリによって2回目の購入動機が異なる」ことが挙げられます。初回がギフト購入の場合、自家消費への転換を促す提案が求められますし、初回がセール品の場合は定価での購入価値を伝えるコミュニケーションが必要です。注文データに商品カテゴリや購入経路(広告・検索・SNS)の情報が紐づいていれば、育成対象セグメント内をさらにサブグループに分けて施策を出し分けることで転換率の向上が見込めます。

休眠顧客(R低・F高・M高)への施策

過去には頻繁に購入していたのに、直近では購入が途絶えている顧客が「休眠顧客」です。RFMスコアでいえばRecencyが低く、FrequencyとMonetaryが高いグループに該当します。このセグメントは、過去に自社ECで購買体験をしておりブランドへの認知がある分、完全な新規顧客よりも復帰の可能性が高いとされています。

休眠顧客への施策で最初に試すべきは「再購入促進メール」です。前回購入した商品のリニューアル情報や、購入カテゴリに関連する新商品の案内を送信します。件名には「お久しぶりです」「前回ご購入いただいた○○に新しいラインナップが加わりました」のように、過去の購入履歴を踏まえた内容を盛り込むと開封率が向上します。

再購入促進メールに反応がなかった場合の次の手段として「復帰限定クーポン」があります。通常のクーポンより割引率を高く設定し(15〜20%程度)、有効期限を14日以内と短めにすることで、行動を促すきっかけを作ります。

それでも反応がない場合は、メール以外のチャネル(LINE・DM・SMS)でのアプローチを検討します。メールの不達やフィルタリングが原因で情報が届いていない可能性があるためです。チャネルを変えるだけで反応が得られるケースは一定数存在します。

休眠顧客への復帰施策には「期限」を設けることが実務上の鉄則です。最終購入から12か月以上が経過しても一度も反応がない顧客は、競合への完全移行やそもそもの購買ニーズ消失の可能性が高くなります。こうした層に施策コストをかけ続けるよりも、育成対象顧客の転換や優良顧客の維持にリソースを振り向けるほうが売上貢献度は高いと判断できます。休眠期間が何か月を超えたら施策対象から外すかは、自社の商品特性と購買サイクルをもとに決定します。

離脱リスク顧客(R低・F低・M低〜中)への対応

RFMスコアが全体的に低い顧客は「離脱リスク層」です。1回だけ購入して以降リピートがないケースが大半を占めます。このセグメントに過度なコストをかけることは費用対効果の面で推奨されません。

離脱リスク層に対しては、コストのかかる個別施策ではなく「自動配信の仕組みで薄く広くアプローチする」方法が適切です。ステップメールの最終段階に「最後のご案内」として期限付きクーポンを配信し、反応がなければ配信リストから除外するという運用が一般的です。

配信リストの定期的な整理は、メール配信のコスト削減だけでなく、配信到達率の維持にも寄与します。開封もクリックもない宛先を含めたまま配信を続けると、メール配信サービスの送信レピュテーションが低下し、優良顧客へのメールまで迷惑フォルダに振り分けられるリスクが生まれます。

離脱リスク層のデータは、削除するのではなく「非アクティブリスト」として保管しておくことを推奨します。年に1〜2回、大型セールやブランドリニューアルのタイミングで再度アプローチすることで、一部の顧客が復帰する可能性があるためです。ただし通常の配信対象からは除外し、配信コストの膨張を防ぎます。

RFM分析とCPM分析・デシル分析の使い分け

CPM分析との違いと使い分け基準

RFM分析と並んでEC事業者に活用されている手法にCPM分析があります。CPM分析は、顧客を「初回現役」「よちよち現役」「コツコツ現役」「流行現役」「優良現役」と、それぞれの「離脱」パターンの合計10グループに分類する手法です。RFM分析が「現時点の顧客価値」を測定するのに対し、CPM分析は「顧客がどの成長段階にいるか」を把握するために設計されています。

使い分けの基準は、分析の目的によって決まります。「今すぐ売上に貢献する施策を打ちたい」「予算を効率的に配分したい」という短期的な目的にはRFM分析が適しています。一方、「新規顧客をリピーターに育てる仕組みを作りたい」「顧客のライフサイクル全体を管理したい」という中長期的な目的にはCPM分析が向いています。

実務上は、RFM分析とCPM分析を併用するEC事業者も多く見られます。RFM分析で「どのセグメントに優先的に予算を配分するか」を決め、CPM分析で「各セグメント内の顧客をどう育成するか」のシナリオを設計するという役割分担です。

CPM分析の10グループ分類では、「初回現役」から「優良現役」へのステップアップだけでなく、「初回離脱」「よちよち離脱」のように離脱パターンも定義されています。この点がRFM分析との大きな違いで、CPM分析は「離脱した段階」を可視化することで、どのフェーズで顧客を取りこぼしているかを特定しやすくなっています。EC事業者がまずRFM分析でセグメントの全体像を把握し、次の段階としてCPM分析でナーチャリングの精度を高めるという導入順序が効率的です。

デシル分析との違い

デシル分析は、全顧客を累計購入金額の高い順に並べ、10等分(デシル1〜10)して各グループの売上構成比を算出する手法です。RFM分析と比べると指標が「金額」の1軸だけに限られるため、分析の精度は劣りますが、実装が簡単で直感的にわかりやすいという利点があります。

デシル分析はRFM分析の前段階として活用するのが効果的です。まずデシル分析で「上位30%の顧客が売上の何%を占めているか」を把握し、顧客の偏りの大きさを数字で確認します。偏りが大きいほどセグメント別施策の効果が見込めるため、RFM分析に進む判断材料になります。

デシル分析だけで施策に落とし込む場合の弱点は、「過去に大量購入したが、もう2年間購入がない顧客」と「毎月少額ながら継続購入している顧客」の区別がつかない点です。金額だけでは購買の鮮度(Recency)が見えないため、休眠顧客への無駄なアプローチが発生します。この問題を解消するのがRFM分析の3軸による分類です。

3つの分析手法の選択基準をまとめると、データ分析に初めて取り組むEC事業者はデシル分析で「顧客の偏り」を可視化するところから始め、次にRFM分析でセグメント別の施策を設計し、さらにナーチャリングの仕組みを精緻化したい段階でCPM分析を導入するというステップが推奨されます。3つの手法は排他的な関係ではなく、分析の深度に応じて段階的に追加していくのが実務上の正しい使い方です。

関連記事:ECサイトのLTV向上を実現する施策と実行ロードマップ

RFM分析の運用フローと定期更新の設計

分析の頻度と更新サイクル

RFM分析は一度実施して終わりではなく、定期的に更新して顧客セグメントの変動を追跡する必要があります。更新頻度は月次が基本です。購買サイクルの短い食品・日用品ECでは隔週での更新も検討に値します。

月次更新のタイミングは「月初」に統一するのが実務的です。前月末時点のデータで分析を実行し、月初にセグメント別の施策を切り替えるサイクルを組みます。Shopifyの標準RFM機能はリアルタイムで更新されますが、施策の切り替え判断は月次で十分です。

更新時に確認すべきポイントは、セグメント間の「移動」です。先月は「育成対象」だった顧客が今月「優良」に移動していれば施策が効いていると判断できます。逆に「優良」から「休眠」に移動した顧客が増えていれば、維持施策に問題がある可能性があります。

施策の実行と効果測定のサイクル

RFM分析の結果をもとに施策を設計したら、Plan(施策設計)→ Do(配信・実行)→ Check(効果測定)→ Act(改善)のPDCAサイクルで運用します。効果測定の指標はセグメントごとに異なります。

優良顧客セグメントでは「リテンション率(維持率)」と「客単価の変動」を追跡します。育成対象セグメントでは「F2転換率(2回目購入率)」と「セグメント移動率」を計測します。休眠顧客セグメントでは「復帰率」と「復帰後の購入単価」を指標にします。

効果測定の期間は、施策実施から最低1か月、可能であれば3か月のスパンで評価します。短期的な反応率だけで判断すると、クーポン施策の即効性に引きずられて本質的な改善を見落とす危険があります。

具体的な効果測定の方法として、RFM分析の更新ごとに「セグメント移動マトリクス」を作成するアプローチがあります。先月と今月のセグメントを突合し、各セグメントから他のセグメントへの移動人数を集計する表です。「育成→優良」に移動した人数が増えていれば育成施策が効いていると判断でき、「優良→休眠」の移動が増えていれば維持施策に問題があると即座に気付けます。セグメント移動マトリクスは、ピボットテーブルの「先月セグメント×今月セグメント」のクロス集計で作成できます。

RFM分析を組織で運用する体制

RFM分析をEC事業の運用に定着させるには、分析担当者とメール配信担当者の連携が欠かせません。分析担当者がセグメントリストを作成し、配信担当者がそのリストに基づいてメルマガやLINE配信のコンテンツを出し分けるというワークフローです。

少人数のEC運営チームでは、分析から配信まで1人が担当するケースも多く見られます。その場合は、分析の工数を最小化する仕組みが必要です。Excelのテンプレートを一度作り込んでおけば、毎月のデータ更新はCSVの差し替えとピボットテーブルの更新だけで完了します。

CRMツールやMAツール(LTV-Lab、ECPower、Klaviyoなど)を導入すれば、RFMスコアリングからセグメント別メール配信までを自動化できます。月額費用は発生しますが、手動運用の工数と人的ミスを削減できるため、月商500万円以上のECサイトであれば投資回収の見込みが立ちやすくなります。

ツール導入の判断基準として、月次のRFM分析更新にかかる作業時間が「4時間以上」になっている場合は自動化の検討タイミングです。Excel運用では、CSVダウンロード・データ整形・ピボットテーブル更新・セグメントリストのメール配信ツールへの流し込みという一連の手作業が毎月発生します。この作業を自動化できれば、空いた時間を施策の改善設計やコンテンツ作成に充てることができます。

RFM分析の落とし穴と運用上の注意点

過去のキャンペーン購入者によるスコアの歪み

RFM分析の精度を下げる要因の1つが、過去の大型キャンペーンで1回だけ購入した顧客の存在です。大幅値引きのセール時に流入した顧客は、通常価格では購入意欲がなく、Frequencyが1のまま離脱していることが多い傾向にあります。

この層がデータの大部分を占めると、スコアリングの分布が歪みます。対策としては、分析対象期間をキャンペーン前に遡りすぎないこと、またはキャンペーン経由の注文にフラグを立てて分析時に除外するフィルタを設けることが有効です。

具体的なフィルタの方法として、注文データに「流入経路」や「使用クーポンコード」の列を追加し、大型セール専用クーポンで購入した注文を識別する方法があります。楽天市場のスーパーセールやお買い物マラソンで一時的に流入した顧客は、通常営業時の顧客とは購買特性が異なります。こうしたキャンペーン顧客を通常顧客と混ぜてスコアリングすると、セグメントの境界が曖昧になり、施策の精度が下がる原因になります。分析対象期間を直近12か月に設定し、キャンペーン専用顧客には別途「キャンペーン顧客セグメント」としてフラグを付与する運用が推奨されます。

セグメント数の増やしすぎ

5段階スコアリングで125セグメントを作ったものの、各セグメントの人数が少なすぎて施策の効果が検証できないという事態はよく発生します。セグメントあたり30人未満では、メール開封率やクーポン利用率の集計値にばらつきが大きく、統計的に意味のある判断ができません。

実務上は、125セグメントをそのまま使うのではなく、類似した行動パターンのセグメントを統合して7〜10グループにまとめるのが定石です。たとえば「R5F5M5」「R5F4M5」「R4F5M5」をまとめて「優良顧客」とし、「R1F1M1」「R1F1M2」「R1F2M1」をまとめて「離脱リスク」とする方法です。

RFM分析だけでは見えない領域

RFM分析は過去の購買行動に基づく分析であるため、顧客の「意向」や「満足度」は測定できません。Recencyが高い(直近で購入した)顧客であっても、商品に不満を持っている可能性はあります。NPS(推奨度)やレビュー評価など、購買データ以外の情報と組み合わせることで、より精度の高い顧客理解が実現します。

また、RFM分析は「個人」ではなく「セグメント」に対する施策設計に向いた手法です。1人の顧客を深く理解するにはCRM上の対話履歴やサポート履歴の分析が必要であり、RFM分析とは補完関係にあります。

もう1点留意すべきは、商品カテゴリの違いです。同じECサイト内でも「消耗品カテゴリ」と「耐久財カテゴリ」では購買サイクルが異なります。サイト全体の注文データで一律にRFM分析を行うと、カテゴリ間の購買頻度の違いがノイズになり、セグメントの精度が落ちます。主力カテゴリが複数ある場合は、カテゴリ別にRFM分析を実施するのが望ましい方法です。

個人情報保護とデータ取り扱いの注意点

RFM分析は顧客の購買データを扱うため、個人情報の取り扱いには十分な注意が必要です。分析に使用するデータは社内利用に限定し、セグメントリストの外部共有は行わないのが原則です。特にメール配信やDM送付を行う場合は、顧客が配信停止を希望した際にすぐに反映できる仕組みを整えておくことが求められます。

Excelやスプレッドシートで分析用ファイルを作成した場合は、ファイルへのアクセス権限を限定し、不要になったデータは削除するという運用ルールを設けます。CRMツールを利用している場合は、ツール側のアクセス権限設定で対応できますが、CSV出力したデータの管理は別途必要です。顧客データの管理体制がずさんだと、情報漏洩のリスクに加えて顧客からの信頼も失うことになるため、分析の精度以前の問題として管理体制を整備します。

よくある質問

Q:RFM分析に必要な最低限の顧客数はどれくらいですか?
A:目安として300〜500人以上の購入顧客データがあれば、3段階のRFM分析(27セグメント)で有意な傾向を読み取れます。顧客数が100人未満の場合は、まずデシル分析で上位・中位・下位の3グループに分ける方法から始めるのが現実的です。

Q:RFM分析はどのくらいの頻度で更新すべきですか?
A:月次更新が基本です。購買サイクルの短い食品・日用品ECでは隔週更新も有効ですが、施策の切り替えサイクルと合わせて月1回の更新で十分なケースが大半です。Shopifyの標準RFM機能はリアルタイム更新のため、手動での再集計は不要です。

Q:RFM分析を行うのに有料ツールは必要ですか?
A:必須ではありません。ExcelまたはGoogleスプレッドシートとカートシステムからのCSVエクスポート機能があれば、RFM分析の実装は可能です。ただし、セグメント別の自動メール配信まで一気通貫で運用したい場合は、CRMツールやMAツールの導入で工数を大幅に削減できます。

Q:楽天市場の出店者でもRFM分析はできますか?
A:RMSの受注データをCSVでダウンロードすれば、自社ECと同じ手順でRFM分析を実施できます。ただし、楽天市場では顧客のメールアドレスがマスクされている場合があるため、メール配信施策はRMS内の「メルマガ配信機能」を活用する形になります。

Q:RFM分析とCPM分析はどちらを先に導入すべきですか?
A:まずRFM分析から導入することを推奨します。RFM分析は3指標のスコアリングだけで実装でき、セグメント別施策の効果を短期間で確認できます。CPM分析は顧客の成長段階を追跡するため、中長期のナーチャリング設計に進む段階で追加導入するのが効率的です。

まとめ

RFM分析は、EC事業者が顧客データを施策に直結させるための基本フレームです。最終購入日・購入頻度・購入金額の3指標で顧客をセグメント化し、優良顧客には維持施策を、育成対象には2回目購入の後押しを、休眠顧客には復帰促進を行うことで、限られた予算で売上への貢献度を最大化できます。

Excelやスプレッドシートがあれば実装できるため、高額なツール投資は不要です。まずは自社の注文データをCSVエクスポートし、本記事で解説した5ステップでセグメント化を実行してみてください。「RFM分析を導入したいが閾値の設定がわからない」「セグメント別の施策設計を相談したい」といったご相談があれば、ぜひお気軽にお問い合わせください。TSUMUGUでは、EC事業者の顧客データを診断しながらCRM施策の設計を一貫してサポートしています。→ まずは相談する(無料)

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