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ECのファクタリング活用|資金繰りを助ける使い方と手数料の注意点

年末商戦に向けて在庫を厚く仕入れたいのに、モールからの入金は翌月末、広告費の請求は今月末という状況で、手元の現金が足りなくなるEC事業者は少なくありません。ファクタリングは、入金待ちの売上債権を手数料と引き換えに前倒しで現金化する手段で、使う場面とコストの上限を決めておけば、短期のつなぎとして役立ちます。

この記事では、ECで使えるファクタリングの種類と手数料の相場、年率に直した本当のコスト、危ない業者の見分け方、ほかの資金調達との使い分けまでを整理しました。

「入金までの資金繰りが回らず仕入れを絞っている」「ファクタリングを使ってよいのか判断できない」といったご相談があれば、ぜひお気軽にご相談ください。▶ サービス紹介資料をダウンロードする(無料)

目次

ECで現金が足りなくなる理由

ECの資金繰りが苦しくなる原因は、売上が立つタイミングと現金が入るタイミングのずれにあります。売上は伸びているのに口座の残高が減っていく状態は、赤字ではなく入出金の時期の問題であるケースが大半です。

たとえば、10月に仕入れた商品が11月に売れ、その売上がモールから12月末に入金されるとします。仕入れ代金と広告費は10〜11月に払うため、2か月以上も立て替えが続く計算です。

入金はモールや決済代行会社を経由して遅れて届く

自社ECでもモールでも、購入者が支払った代金はいったん決済代行会社やモール運営会社に入り、締め日を経てから事業者に入金されます。締めから入金までの期間はサービスによって異なり、数日で届くものもあれば、1か月以上かかるサービスも珍しくありません。

以前はモール側が入金を早める有料の仕組みを用意していた時期もありましたが、そうしたサービスは終了することもあります。入金サイクルは自社でコントロールしにくい前提で、資金計画を立てておくのが安全です。

広告費と仕入れが先に出ていく構造

ECでは、広告費をかけて新規顧客を集め、2回目以降の購入で費用を回収するモデルが一般的です。広告費は配信した月に請求される一方、回収は数か月後になるため、成長期ほど現金が先に出ていきます。

仕入れも同じで、売れ筋の欠品を防ぐために在庫を積むほど、現金が商品に姿を変えて倉庫に眠ります。売上が伸びるほど資金が足りなくなる現象は、ECが成長期に入った証拠といえます。

季節の山で資金需要が一気に膨らむ

年末商戦、母の日、楽天スーパーSALEのような売上の山の前には、仕入れと広告費が平常月の2〜3倍に膨らむことがあります。山の前に必要な現金が、山の後に入ってくるため、1年のうち数か月だけ資金がひっ迫する事業者も珍しくありません。

資金不足の規模を数字でつかむ

資金がどれだけ足りないかは、月ごとの入金予定と支払い予定を並べた資金繰り表で確認します。感覚で「来月が苦しい」と考えるのではなく、不足額と不足する期間を「11月に150万円、12月10日まで」のように特定するのが出発点です。

不足額と期間がわかれば、必要な調達額と、どの手段なら間に合うかが絞り込めます。不足が数十万円で2週間程度なら、仕入れ先への支払い日の相談だけで解決するケースも珍しくありません。

ファクタリングを検討するのは、こうした一時的な資金のずれを埋めたいときです。まずは自社の資金不足が「一時的なずれ」なのか「慢性的な赤字」なのかを、過去12か月の入出金から見極めてみてください。

関連記事:ECのキャッシュフロー改善|資金繰りと仕入れの整え方

ファクタリングの仕組みと融資との違い

ファクタリングは、まだ入金されていない売上債権をファクタリング会社に売り、手数料を差し引いた金額を先に受け取る取引を指します。お金を借りる融資とは違い、債権を売るため、借入金として負債が増えない点が特徴です。

売上債権とは、商品を売ったものの代金をまだ受け取っていない状態の権利を指します。ECでは、モールや決済代行会社からの入金予定額や、法人の取引先に掛け払いで販売した請求額が代表例です。

融資との3つの違い

1つ目の違いは審査の対象で、融資は自社の返済能力を見るのに対し、ファクタリングは売上債権を支払う側の信用力を重く見ます。創業間もない事業者や赤字決算の事業者でも利用しやすいのは、審査の軸が異なるからです。

2つ目はスピードで、融資は申し込みから実行まで数週間かかるのに対し、オンライン型のファクタリングは最短で当日に入金されます。3つ目はコストで、融資の金利が年1〜5%程度なのに対し、ファクタリングは1回の取引で数%から20%近い手数料がかかるのが一般的です。

返済義務がない取引が原則

正規のファクタリングでは、売上債権の支払いが滞った場合のリスクをファクタリング会社が負います。利用者に買い戻しを求めない契約を「償還請求権なし(ノンリコース)」と呼び、正規の取引ではこの形が原則です。

逆にいえば、支払いが滞ったときに利用者が全額を返す契約は、実質的には貸付けと変わりません。契約書に買戻し義務や利用者が自分の資金で支払う義務が書かれていたら、その時点で契約を見送る判断が無難です。

ファクタリングで現金化できないもの

ファクタリングで売れるのは、すでに発生した売上の代金や、取引実績から見込める将来の売上債権に限られます。まだ受注していない売上や、個人の給与を対象にした取引は、ファクタリングとして扱われません。

特に、個人の給与を対象にした「給与ファクタリング」は、金融庁が貸金業に該当すると明示している取引です。事業の資金繰りとは別物ですが、従業員から相談を受けた場合にも、利用を勧めないよう注意してください。

ECで使えるファクタリングの種類

EC事業者が使えるファクタリングは、2社間、3社間、将来債権の買取、法人向け請求書の買取の4つに大きく分かれます。どの売上債権を、誰に知らせて売るかで、手数料と使える場面は大きく異なるでしょう。

種類の違いを知らずに申し込むと、本来は低い手数料で済む取引に高い手数料を払うことになりかねません。自社の売上債権がどの種類に当てはまるかを、最初に確認しておくと選択を誤りにくくなります。

2社間ファクタリング

2社間ファクタリングは、利用者とファクタリング会社の2社だけで契約し、売上債権を支払う側には知らせない方式です。取引先に知られずに即日の入金も狙える反面、回収のリスクをファクタリング会社が負うため、手数料は8〜20%程度と高めに設定されます。

2社間では、入金された代金を利用者がいったん受け取り、ファクタリング会社に渡す流れが一般的です。二重に売られることを防ぐために、債権譲渡登記を求められ、司法書士への報酬などで数万円の費用が別にかかる場合もあります。

3社間ファクタリング

3社間ファクタリングは、売上債権を支払う側も契約に加わり、代金をファクタリング会社に直接支払う方式です。回収のリスクが低いぶん、手数料は2〜9%程度に下がります。

ただし、支払う側の同意が必要で、モール運営会社や大手の決済代行会社が個別の事業者のために同意する場面は多くありません。3社間が現実的なのは、法人の取引先に掛け払いで販売しているBtoBのEC取引でしょう。

どの種類が自社に当てはまるかの見分け方

見分ける手がかりは、売上債権を支払う側が誰か、という一点です。支払う側がモール運営会社や決済代行会社なら2社間か将来債権の買取型、法人の取引先なら3社間も含めて比べられます。

売上の大半が個人向けのモールや自社ECで、法人向けの掛け売りがほとんどない事業者は、選べる種類が限られます。その場合は、ファクタリングより先に、後ほど紹介する融資や支払い条件の交渉を検討するほうが費用を抑えられるはずです。

将来債権の買取型

EC向けに広がっているのが、これから発生する売上の一部を先に買い取る将来債権の買取型です。ネットショップ作成サービスのBASEが提供するYELL BANKのように、販売実績のデータで審査し、売上から自動で差し引く仕組みもあります。

将来債権型の手数料は1〜15%程度で、売上がない月は支払いが発生しない設計のサービスもあります。ECの売上データやレビュー、在庫状況まで与信に使うサービスでは、平均手数料が5%を下回る例も出てきました。

法人向け請求書の買取

卸売りや法人ギフトなど、法人の取引先に請求書で販売している場合は、その請求書を買い取ってもらう一般的なファクタリングが使えます。支払期日が30〜60日先の請求書でも、早ければ当日中の現金化に対応する会社が少なくありません。

法人向けの掛け払いを増やすほど入金までの期間は延びるため、BtoBの売上比率が高いECほどファクタリングと相性がよいといえます。取引先の信用力が高いほど手数料は下がるため、請求先ごとに見積もりを取り比べてみてください。

関連記事:BtoB ECの掛け払い・請求書払いを導入する方法|与信から請求業務までの進め方

手数料の相場と年率に直した本当のコスト

ファクタリングの手数料は、2社間で8〜20%程度、3社間で2〜9%程度、将来債権の買取型で1〜15%程度が目安です。数字だけを見ると数%の差ですが、何日早く現金化するかで年率に直したコストは大きく変わります。

見積もりを比べる担当者の多くは、手数料率の低さだけで判断しがちです。しかし、手数料率を「早まった日数」で割り戻し、融資の金利と同じ物差しで比べると判断を誤りにくくなります。

年率に直すと何%になるか

100万円の売上債権を、入金予定日の30日前に手数料10%で売った場合、受け取るのは90万円です。10万円の手数料を30日分の資金調達の費用とみなし、年率に直すとおよそ120%を超える水準になります。

同じ10%でも、60日前に現金化するなら年率は約60%、手数料3%で30日前なら約36%に下がります。銀行融資の金利が年1〜5%程度であることを踏まえると、ファクタリングは「高い費用を払って時間を買う手段」と割り切って使うのが前提です。

手数料以外にかかる費用

見積もりの手数料率とは別に、債権譲渡登記の登録免許税や司法書士への報酬、事務手数料、印紙代がかかる場合があります。2社間で債権譲渡登記を求められると、登録免許税と司法書士報酬で5万〜10万円ほどが上乗せされた例もありました。

少額の売上債権を何度も売ると、こうした固定費の比率が上がり、実質の手数料率が見積もりより高くなります。見積もりを取る際は「受け取れる金額の総額」と「差し引かれる費用の内訳」を書面で出してもらうのが確実な比べ方です。

手数料が決まる要素

手数料率は、売上債権を支払う側の信用力、債権の金額、入金までの日数、過去の取引実績、2社間か3社間かで決まります。支払う側が上場企業や大手モールであれば回収のリスクが低いと評価され、手数料は下がる傾向です。

同じファクタリング会社を継続して使うと、実績が評価されて2回目以降の手数料が下がる例もあります。ただし、手数料を下げるために利用回数を増やすと、次に説明する「常用」の状態に陥るため注意してください。

見積もりは受取額と日数で比べる

見積もりを比べるときは、手数料率ではなく「受け取れる金額」と「何日早く入金されるか」の2点を並べます。100万円の売上債権を、A社は手数料7%で入金が3営業日後、B社は手数料9%で即日入金という場合、急ぎでなければA社のほうが2万円多く受け取れる計算です。

もっとも、A社の見積もりに債権譲渡登記の費用が別途かかるなら、差は逆転する可能性もあります。諸費用を含めた受取額を1行で書き出し、同じ条件で比べてから決めてください。

粗利率と比べて判断する

ファクタリングの手数料は、その売上から得られる粗利から差し引かれます。粗利率30%の商品の売上債権を手数料15%で売れば、その売上の利益は半分になる計算です。

手数料を払ってでも仕入れを前倒しする価値があるのは、前倒しで生まれる追加の粗利が手数料を上回る場合に限られます。たとえば、手数料10万円で仕入れた在庫が年末商戦で30万円の粗利を生むなら、使う判断に合理性があるでしょう。

ECでファクタリングが向いている場面・向いていない場面

ファクタリングが向いているのは、売上の見込みが確かで、入金までの一時的なずれだけが問題になっている場面です。一方で、赤字の穴埋めや、毎月の固定費の支払いに使うと、手数料が利益を削り続けて資金繰りはかえって悪化します。

実務の解説でも、ファクタリングは「緊急時の備え」として正しい使い方と危険な使い方を分けて理解することが強調されています。使う前に、自社の状況がどちらに当てはまるかを冷静に見極めるのが先決です。

向いている場面

1つ目は、季節商戦の前の仕入れ資金です。年末商戦の在庫を確保すれば売れる見込みが高く、入金後に資金がすぐ回復する場面なら、数%の手数料を払っても機会損失を防ぐ効果のほうが上回ります。

2つ目は、融資の実行までのつなぎです。銀行や日本政策金融公庫の融資が決まっていて、実行までの2〜4週間だけ資金が足りない場合は、短期のつなぎとして使う判断に合理性があります。

3つ目は、法人の大口注文で掛け払いの入金が60日先になる場面です。大口案件の原材料費を先に払う必要があるとき、その請求書を現金化すれば、受注を断らずに済みます。

向いていない場面

毎月の家賃や人件費、モールの出店料といった固定費の支払いにファクタリングを使うのは避けるほうが無難です。固定費の不足は一時的なずれではなく、売上と費用の構造の問題であるケースがほとんどだからです。

広告費の不足を埋めるために使う場合も、広告の回収期間を把握していなければ危険です。回収できるかわからない広告に、年率で100%を超えかねない資金を充てる判断は、リスクが高いため避けるほうが無難でしょう。

判断に迷ったときの3つの問い

使うかどうか迷ったら、「前倒しで得たお金で何を払うのか」「その支払いで手数料以上の粗利が生まれるか」「翌月以降に同じ不足が繰り返されないか」の3つを確認します。3つすべてに数字で答えられる場合に限り、使う判断に進むのが安全です。

1つでも答えに詰まる場合は、資金不足の原因が別のところにある可能性が高いと考えます。その場合は、在庫の量や広告費の配分を見直すほうが、手数料を払うより確かな改善策です。

常用に陥るサイン

3か月連続でファクタリングを使っている、使わないと翌月の支払いができない、という状態は常用のサインです。常用に陥り、毎月の売上債権を手数料10%で売り続けると、売上の1割近くが手数料として消えていきます。

常用のサインが出たら、新たな調達よりも、仕入れの量、広告費、支払い条件の見直しを優先します。ファクタリングは「年に数回まで」「1回あたりの売上債権の何割まで」と、使う上限を先に決めておくと常用を防げるはずです。

関連記事:ECの損益分岐点の計算方法|黒字化までの手順

ファクタリング利用の流れと必要書類

オンライン型のファクタリングなら、申し込みから入金までは早ければ当日、通常は2〜3営業日が目安です。必要な書類を事前にそろえておくと、急ぎの場面でも審査が止まらずに進みます。

資金が足りないと気づいてから慌てて探すと、書類の準備と業者の比較に時間を取られます。資金繰り表で不足が見えた段階で、候補の業者を2〜3社に絞っておくと、条件の悪い業者に飛びつかずに済むでしょう。

申し込みから入金までの流れ

流れは、見積もりの依頼、必要書類の提出、審査、契約、入金の5段階です。審査では、売上債権が実在するか、支払う側に問題がないか、利用者が同じ債権を二重に売っていないかが確認されます。

オンライン型では、書類のアップロードと電子契約で完結し、面談も不要な場合があります。対面での契約が必要な業者もあるため、急ぐ場合は電子契約に対応しているかを最初に確認してください。

EC事業者が求められやすい書類

一般的に求められるのは、売上債権を証明する請求書や入金予定の明細、入金実績がわかる通帳の写し、本人確認書類です。EC事業者の場合は、モールや決済サービスの管理画面から出力した売上明細や入金予定表が、売上債権の証明として使われます。

将来債権の買取型では、ECの売上データやアクセス数、レビューの評価、在庫の状況まで審査に使うサービスもあります。日頃から売上と入金の記録を月ごとに整理しておくと、どの方式を選ぶ場合でも審査が早く進むでしょう。

審査で断られやすいケース

審査で断られやすいのは、売上債権の実在が確認できない場合や、支払う側の入金実績が通帳で追えない場合です。同じ売上債権をすでに別の会社に売っている場合や、入金予定日が大幅に先の債権も、買取を断られる傾向があります。

モールや決済サービスの売上の場合は、管理画面の売上明細と、実際の入金記録が一致しているかが重視されます。日頃から入金の記録を口座ごとに整理しておくと、審査の場面で慌てずに済むはずです。

契約前に確認する5つの項目

契約前には、手数料と諸費用の総額、償還請求権の有無、債権譲渡登記の要否、入金日、契約の解除条件の5点を確認します。ファクタリング会社自身の解説でも、契約前に確認すべきポイントと契約書の注意点を押さえることが、トラブル防止の基本として挙げられていました。

口頭の説明と契約書の内容が違う場合は、契約書の記載が優先されます。わからない条項が1つでもあれば、署名の前に質問し、回答を書面かメールで残しておくのが安全です。

年末商戦の仕入れで使う場合の試算

ファクタリングを使うべきかは、具体的な数字に置き換えると判断しやすくなります。ここでは、月商300万円の自社ECが年末商戦の仕入れ資金を確保する場面を例に、使う場合と使わない場合を比べた結果が次のとおりです。

前提として、11月に仕入れ代金300万円の支払いがあり、手元の現金は150万円しかないとします。10月分の売上債権300万円は、決済代行会社から12月10日に入金される予定です。

使わない場合に起きること

ファクタリングを使わなければ、仕入れは手元資金の範囲内の150万円分に抑えるしかありません。年末商戦で在庫が早々に売り切れ、12月の売上が想定の半分にとどまる事態も考えられるでしょう。

粗利率40%の商品なら、仕入れを150万円分減らすと、本来得られた粗利のうち最大で100万円前後を逃す計算です。欠品による検索順位の低下や、買えなかった顧客の離脱も、数字には表れにくい損失として残ります。

使う場合のコスト

10月分の売上債権のうち約163万円を、入金予定日の約30日前に手数料8%で売ると、受け取るのは約150万円です。手数料は約13万円で、手元の150万円と合わせて仕入れを予定どおり300万円分確保できます。

仕入れた在庫が予定どおり売れれば、追加で確保した粗利は手数料約13万円を大きく上回ります。この試算のように「手数料」と「前倒しで守れる粗利」を同じ表に並べると、使うべきかどうかを感覚ではなく数字で判断できるはずです。

将来債権の買取型を使った場合との比較

同じ約150万円を、手数料5%の将来債権の買取型で調達した場合、手数料は約8万円に下がります。支払いは翌月以降の売上から一定割合で差し引かれるため、12月の入金を待たずに資金が回る点は2社間と変わりません。

一方で、売上から差し引かれる期間中は、毎月の入金額が少し減った状態が続きます。年末商戦の後に閑散期が来る商材では、差し引きが続く1〜2月の資金繰りまで資金繰り表で確かめておいてください。

判断を誤りやすい前提

試算で最も注意したいのは、仕入れた在庫が「予定どおり売れる」という前提です。過去の年末商戦の販売実績がない商品や、需要が読みにくい新商品の仕入れにファクタリングを使うと、売れ残りと手数料の両方を抱えるリスクがあります。

前年の同じ時期の販売データがあり、在庫の消化率が8割以上見込める商品に限って使う、といった条件を決めておくと判断がぶれにくくなります。条件に当てはまらない場合は、仕入れ量を抑えて予約販売に切り替える方法も検討してください。

関連記事:EC年末商戦の売上対策|8週間前からの準備スケジュールとセール設計

利用前に社内で決めておく3つのルール

ファクタリングで失敗する事業者の多くは、資金に追われた状態で、その場の判断で契約しているのが実情です。平時のうちに社内で使い方のルールを決めておくと、急ぎの場面でも冷静に判断できます。

ルールは、経営者と経理担当、EC運営の担当者が同じ内容を共有している必要があります。担当者が独断で契約し、経営者が後から手数料の大きさに気づくという事態を防ぐためです。

使ってよい目的を限定する

1つ目のルールは、使ってよい目的を「売れる見込みが確かな仕入れ」と「決まった融資までのつなぎ」に限ることです。固定費の支払いや、回収期間がわからない広告費には使わないと明文化しておきます。

そのため、目的を限定しておけば、資金が足りなくなるたびにファクタリングに頼る流れを止められます。目的に当てはまらない資金不足は、経営の問題として経営者が判断する仕組みにしておくのが理想でしょう。

手数料と金額の上限を決める

2つ目のルールは、手数料率と1回あたりの金額の上限です。たとえば「手数料は10%以内」「1回あたり月商の5割まで」「年3回まで」と決めておくと、手数料が利益を食いつぶす前に歯止めがかかります。

上限を超える条件しか提示されない場合は、ファクタリング以外の手段を検討する合図と受け止めます。上限は一度決めて終わりではなく、粗利率や月商が変わったタイミングで見直してください。

使った後の振り返りを残す

3つ目のルールは、使うたびに目的、金額、手数料、前倒しで得た効果を記録し、翌月に振り返ることです。記録が残っていれば、次に同じ季節が来たときに、融資や支払い条件の交渉で先回りできたかを検証できます。

振り返りを3回分ためると、自社の資金不足がどの時期にどのくらいの規模で起きるかが見えてきます。その傾向をもとに、次の年は融資の相談を早めるなど、ファクタリングを使わない計画に置き換えていけるでしょう。

危ないファクタリング業者の見分け方

ファクタリングを名乗りながら、実態は違法な貸付けを行う業者が存在し、金融庁も注意を呼びかけています。資金繰りに追われている時ほど条件を確かめずに契約しがちなため、危ない業者の特徴を事前に知っておくことが自衛策になります。

金融庁は、貸金業の登録を受けていない者がファクタリングを装って貸付けを行う事案を確認しているとしています。こうした業者と契約すると、年率に直して数百%に及ぶ費用を負担させられるおそれも否定できません。

偽装ファクタリングの特徴

金融庁が貸金業に該当しうるとして挙げているのは、売上債権の額に比べて著しく低い金額しか渡さない取引です。売主に債権の買戻しを求める取引や、売主が自分の資金でファクタリング業者に支払う義務を負う取引も、実質的には貸付けと判断される可能性があります。

「売上債権が回収できなかったら利用者が全額を払う」という条件は、正規のファクタリングにはない仕組みです。契約書にこの趣旨の条項が含まれていたら、名称がファクタリングでも、貸付けと同じ取引だと考えてください。

避けるべき業者のチェックリスト

手数料が30%を超える、担保や保証人を求める、会社の所在地や代表者がWebサイトに載っていない、契約書を渡さない、という業者は避けるのが原則です。電話やSNSで一方的に勧誘してくる業者や、審査なしで即日入金を約束する業者も、慎重に扱う必要があります。

手数料の内訳を書面で示さず、入金額だけを口頭で伝える業者も注意が必要です。見積もりの段階で「総額」と「内訳」を書面で出さない業者とは、どれだけ急いでいても契約しない判断が身を守ります。

困ったときの相談先

契約内容に不安がある場合は、金融庁の金融サービス利用者相談室(0570-016811)や消費者ホットライン(188)が相談先です。脅迫的な取り立てを受けているときは、警察相談専用電話(#9110)の利用も検討してください。

業者が貸金業の登録を受けているかは、金融庁の「登録貸金業者情報検索サービス」で調べられます。ファクタリング会社には貸金業の登録は不要ですが、貸付けに近い条件を提示された場合の確認手段として覚えておくと役立つでしょう。

比較するときは3社以上から見積もりを取る

同じ売上債権でも、ファクタリング会社によって手数料率は数%単位で変わります。最低でも3社から見積もりを取り、手数料、諸費用、入金日、償還請求権の有無を同じ表に並べて比べると、条件の差がはっきりするはずです。

見積もりの依頼自体は無料で受け付けている会社がほとんどです。急ぎの場面でも、見積もりを1社だけで決めないことが、余計な費用を払わないための基本といえます。

ファクタリング以外のEC向け資金調達との比較

資金が足りないときの選択肢は、ファクタリングだけではありません。銀行や日本政策金融公庫の融資、売上と連動して返済する調達、補助金、支払い条件の交渉などを比べ、費用の安い順に使うのが基本です。

どの手段にも向き不向きがあり、スピードとコストはおおむね反比例します。資金が必要になる時期から逆算し、間に合う手段の中で最も費用の安いものを選ぶ考え方が、調達コストを抑える近道です。

銀行融資と日本政策金融公庫

最も費用が安いのは、銀行や日本政策金融公庫の融資で、金利は年1〜5%程度が目安です。審査と実行に数週間から1か月以上かかるため、資金が必要になる2〜3か月前から事業計画と資金繰り表を用意して相談を始める必要があります。

創業間もない事業者でも、公庫の創業向けの融資や、自治体の制度融資を使える場合があります。資金に余裕がある平時に融資の実績を作っておくと、いざというときの審査が通りやすくなるでしょう。

売上連動型の資金調達

ECの売上データをもとに資金を提供し、売上の一定割合を自動で差し引いて回収する方式も増えています。将来債権の買取型と仕組みが近く、売上が落ちた月は支払いも減るため、季節変動の大きいECと相性がよい点が特徴です。

ただし、手数料を年率に直すと融資より高くなるケースが多く、使える金額も月商に応じた上限があります。融資が間に合わない場面の選択肢として、ファクタリングと並べて比べるのが現実的でしょう。

支払い条件の交渉と補助金

見落としがちなのが、仕入れ先との支払い条件の交渉です。支払いサイトを月末締め翌月末払いから翌々月末払いに延ばせれば、外部から調達しなくても1か月分の資金に余裕が生まれます。

国や自治体の補助金も、ECサイトの構築や販路開拓の費用に使える場合があります。補助金は原則として後払いで、採択から入金までに数か月かかるため、つなぎの資金と組み合わせて計画することになります。

予約販売やクラウドファンディングの前受金

新商品の立ち上げや限定商品の販売では、予約販売やクラウドファンディングで代金を先に受け取る方法もあります。製造や仕入れの前に資金が入るため、外部から調達しなくても資金繰りの負担を軽くできる点が魅力です。

一方で、前受金を受け取った後に納期が遅れると、返金対応で一気に現金が出ていきます。前受金は製造費と配送費に充てる分を先に確保し、残りを広告費に回すといった使い道の順番を決めておくのが安全です。

調達手段の選び方の順番

調達手段は、支払い条件の交渉、融資、売上連動型や将来債権の買取、2社間ファクタリングの順に検討すると、費用を抑えやすくなります。急ぎの度合いが高いほど後ろの手段に頼らざるを得ないため、早めに動くこと自体が有効なコスト削減策です。

複数の手段を平時から確保しておけば、1つが使えなくなっても資金繰りが止まりません。まずは取引のある金融機関に、来年の繁忙期の資金計画を相談するところから始めてみてください。

関連記事:EC補助金の申請方法|IT導入補助金の対象外と使える制度

会計処理と資金繰り表への組み込み方

ファクタリングを使ったら、会計処理と資金繰り表の両方に正しく反映させる必要があります。処理を誤ると、決算書の数字が実態とずれ、次の融資の審査で不利に働きかねません。

税理士による解説でも、ファクタリングは法的には売上債権の譲渡であり、手形の割引とは扱いが異なる点が説明されていました。具体的な処理は顧問の税理士と確認しつつ、基本の考え方を押さえておくと話が早く進みます。

基本の会計処理

売上債権を売ったときは、売掛金を減らし、受け取った現金と手数料を計上します。手数料は「売上債権売却損」などの費用として処理するのが一般的で、借入金は発生しません。

売上債権の譲渡は、消費税の上では非課税の取引として扱われるのが一般的です。将来債権の買取型や売上連動型は契約によって処理が変わる場合があるため、契約書を税理士に見せて判断してもらうと安心できます。

資金繰り表に反映させる

資金繰り表には、ファクタリングで前倒しした入金と、本来の入金予定日の入金が消えることの両方を書き込みます。前倒しした分だけ翌月以降の入金が減るため、翌月の資金不足を招いていないかを3か月先まで確認するのが基本です。

ファクタリングを使った月だけ残高が増えて見え、その2か月後に再び不足するという流れは、常用の入口になりやすいパターンです。前倒しした入金で何を払い、その結果いつ現金が戻るのかを資金繰り表で説明できない場合は、利用を見送る判断が賢明といえます。

経理担当と共有しておく記録

ファクタリングを使った取引は、契約書、見積書、入金明細、売上債権の明細をひとまとめにして保管します。どの売上債権を、いつ、いくらで売ったかが後から追えないと、売上の入金確認で二重計上や漏れが起きやすいのが実情です。

2社間の場合は、本来の入金日に事業者の口座へ入った代金を、ファクタリング会社に送金する作業も発生します。送金の期日と金額を経理担当と共有し、カレンダーに登録しておくと、支払い遅れによるトラブルの予防策として有効です。

融資の審査への影響

ファクタリングの利用そのものが、融資の審査で直ちに不利になるわけではありません。ただし、決算書に多額の売上債権売却損が毎期計上されていると、資金繰りに余裕がない事業者と見られる可能性があります。

金融機関に相談する際は、ファクタリングを使った理由と、今後は使わずに済む見通しを資金繰り表で示すと説得力が増します。一時的な季節の資金需要に対応した結果であれば、その事情を数字で説明できるよう準備しておいてください。

関連記事:EC損益計算書の読み方|5つの利益と費用構造の分析

ファクタリングに頼らない資金繰りへの切り替え方

ファクタリングはあくまで一時的な手段で、資金繰りを根本から安定させるには、現金が出ていく時期と入ってくる時期の差を縮める必要があります。在庫、広告費、支払い条件の3つを見直すと、外部からの調達に頼る回数は着実に減っていくはずです。

資金の流れを測る指標として、現金化までの日数を示すCCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)があります。在庫が売れるまでの日数と売上の入金までの日数を足し、仕入れ代金の支払いまでの日数を引いた値で、短いほど資金繰りが楽になります。

在庫の回転を速める

最も効果が大きいのは、在庫が現金に戻るまでの日数を縮めることです。売上の上位2割の商品に在庫を集中させ、動きの遅い商品はセールやセット販売で早めに現金に戻すと、倉庫に眠る現金が減ります。

在庫日数が60日から45日に縮めば、月商500万円の事業者なら仕入れ原価ベースで数十万円規模の現金が手元に戻る計算です。ファクタリングの手数料を払うより先に、在庫の中に眠っている現金を取り戻す手順を検討してください。

広告費の回収期間を把握する

広告費は、新規顧客1人の獲得費用を何か月で回収できるかを把握してから増やします。回収期間が3か月なら、増やした広告費の3か月分は現金が先に出ていくと見込んで資金を準備しておくのが前提です。

回収期間が把握できていない広告に予算を積み増すと、売上は伸びても現金が追いつかなくなります。広告の増額は、資金繰り表で3か月先の残高を確かめたうえで判断するのが安全です。

入金を早める仕組みを選ぶ

決済サービスによって、締め日から入金までの日数や、入金の頻度は異なります。決済サービスを見直す際は、決済手数料の率だけでなく、入金サイクルの短さも比較の対象に加えてください。

法人向けの販売では、前払いや分割での入金を条件に加えるだけで、掛け払いの立て替えを減らせます。大口の注文ほど着手金を受け取る取り決めにすると、原材料費の立て替えも小さく抑えられるでしょう。

売上の山をならす販売計画

季節の山に売上が集中するほど、山の前に必要な資金も大きくなります。予約販売で代金を先に受け取る、閑散期向けの商品を育てるといった工夫で売上の山をならすと、資金需要のピークも低く抑えられるのが利点です。

予約販売は、受注した数量に合わせて仕入れられるため、在庫の売れ残りも減らせる方法です。年末商戦の主力商品から1つ選び、翌年は予約販売を試すところから着手すると、効果を確かめやすくなります。

月次で資金繰りを確認する習慣

資金不足は、資金繰り表で3か月先まで見ていれば、ほとんどの場合は事前に予測できます。毎月同じ日に入金予定と支払い予定を更新し、残高がマイナスになる月を早めに見つけるのが基本の運用です。

不足が3か月前にわかれば、融資の相談や支払い条件の交渉といった費用の安い手段が間に合います。ファクタリングを使う場面そのものを減らすために、今月から資金繰り表の更新を習慣にしてみてください。

関連記事:自社ECの在庫管理戦略|欠品・過剰在庫の防止から安全在庫計算・需要予測・在庫管理システム選定まで実践解説

よくある質問

Q:ファクタリングを使うと、借入金として決算書に載りますか?
A:ファクタリングは売上債権の売却のため、借入金としては計上されません。手数料は売上債権売却損などの費用として処理するのが一般的で、詳細は契約内容をもとに税理士に確認してください。

Q:モールの売上金でもファクタリングは使えますか?
A:モールや決済サービスからの入金予定額を対象に買い取るファクタリング会社や、ECの売上データで審査する将来債権の買取型のサービスがあります。モール運営会社が同意する3社間は現実的ではないため、2社間か将来債権型を比べるのが一般的です。

Q:ファクタリングの手数料はどのくらいが相場ですか?
A:目安は2社間で8〜20%程度、3社間で2〜9%程度、将来債権の買取型で1〜15%程度です。手数料率だけでなく、何日早く現金化できるかで年率に直し、融資の金利と比べて判断してください。

Q:赤字決算でもファクタリングは利用できますか?
A:ファクタリングは売上債権を支払う側の信用力を重く見るため、赤字決算や創業間もない事業者でも利用できる場合があります。ただし、赤字の穴埋めに使うと手数料で赤字が広がるため、使う目的は一時的な資金のずれに限るのが安全です。

Q:取引先にファクタリングの利用は知られますか?
A:2社間ファクタリングでは、売上債権を支払う側に通知しないのが一般的です。債権譲渡登記をすると登記情報として第三者が確認できる状態になるため、気になる場合は登記の要否を契約前に確認してください。

Q:ファクタリングと融資は、どちらを優先すべきですか?
A:時間に余裕があるなら、費用の安い融資を優先するのが基本です。融資の実行が間に合わない場面に限り、つなぎとしてファクタリングを使う順番にすると、調達の費用を抑えられます。

Q:契約書で特に確認すべき項目は何ですか?
A:手数料と諸費用の総額、償還請求権の有無、債権譲渡登記の要否、入金日、解除条件の5点を確認してください。売上債権が回収できなかったときに利用者が全額を払う条件が入っている場合は、貸付けと同じ取引の可能性があるため契約を見送るのが無難です。

Q:ファクタリングを毎月使っても問題ありませんか?
A:毎月の利用は、手数料が粗利を削り続ける常用の状態で、資金繰りはかえって悪化しやすくなります。3か月以上続けて使っている場合は、在庫、広告費、支払い条件の見直しを優先してください。

まとめ

ECのファクタリングは、入金待ちの売上債権を手数料と引き換えに前倒しで現金化する手段で、季節商戦の仕入れや融資までのつなぎに使うのが基本です。手数料を年率に直して融資と比べ、使う目的と上限を社内で決めたうえで、資金繰り表で3か月先を見る運用から始めてみてください。

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