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ECサイトのカスタマージャーニーマップの作り方|5ステージ別テンプレートと施策への落とし込み

ECサイトの売上を伸ばそうと施策に手をつけても、効果が出ないまま立ち消えになってしまう担当者は少なくありません。原因の多くは、顧客がどの段階で何に迷い、どこで離脱しているかを把握しないまま、思いつきで施策を打っている点にあります。

この記事では、顧客の購買プロセスを1枚に可視化するカスタマージャーニーマップについて、ECサイト向けの作り方を6つのステップで解説します。「何から手をつければいいかわからない」「施策を打っても成果につながらない」といったご相談があれば、ぜひお気軽にご相談ください。▶ サービス紹介資料をダウンロードする(無料)

目次

カスタマージャーニーマップとは|思いつきの施策を止める1枚の地図

新しい広告を試し、トップページを変え、クーポンを配っても数字が動かないという声をよく聞きます。そんな状態に陥っているEC担当者は珍しくありません。

打ち手がバラバラで、顧客のどの行動に効いているのかが見えないまま手数だけが増えていきます。どこに問題があるのかを突き止められないまま、改善が空回りしてしまいます。

カスタマージャーニーマップは、顧客が商品を知ってから購入し、再び買うまでの道のりを1枚の表に描き出したものです。横軸に購買の段階を並べ、縦軸に顧客の行動や感情、接点、課題を書き込むことで、施策が必要な場所をひと目で判断できます。

顧客の行動・感情・接点を1枚に可視化する

カスタマージャーニーの「ジャーニー」は旅という意味です。顧客は商品をいきなり買うわけではなく、知り、興味を持ち、比較し、購入し、満足すればまた戻ってくるという旅をたどります。

この旅の各地点で、顧客が何をして、何を感じ、どこで自社と接触しているかを並べて書くのがカスタマージャーニーマップです。たとえば「比較検討の段階で送料がわからず不安になり、他店のページに移動した」という一連の流れが、表の上で具体的に見えてきます。

頭の中だけで顧客像を考えていると、担当者ごとにイメージがずれたまま施策の議論が進みます。1枚の地図に落とすと、チーム全員が同じ顧客像を共有でき、議論の土台がそろうという効果も生まれます。

ECで作る意味は「部分最適」から抜け出せること

ECサイトの運営は、広告、商品ページ、カート、メルマガ、同梱物と担当領域が細かく分かれがちです。それぞれが自分の持ち場だけを最適化すると、顧客から見たときの体験はつぎはぎになり、途中で離脱されてしまいます。

カスタマージャーニーマップは、こうした部分最適をつなぎ直す役割を果たします。顧客の旅全体を1本の線として捉えることで、「広告は強いのに購入後のフォローが弱い」といった全体のボトルネックが見えてきます。

実際に運営の現場では、個別ページの改善だけを繰り返してもCVRが頭打ちになるケースが多く報告されています。顧客の流れ全体を俯瞰してから手を入れたところ、離脱の真因が比較検討段階の情報不足にあったとわかった、という改善報告も珍しくありません。

ECのカスタマージャーニーは5つのステージで考える

BtoCのECサイトでは、顧客の旅をおおまかに5つのステージに分けると整理しやすくなります。認知、興味・関心、比較検討、購入、リピート・ファン化の5段階です。

横軸にこの5ステージを並べ、各ステージで顧客が何を考えどう動くかを書き込んでいきます。ここではステージごとの典型的な行動と感情、接点、つまずきやすい課題を順に見ていきます。

ステージ1:認知(商品やお店を初めて知る)

認知は、顧客が自社の商品やショップの存在を初めて知る段階です。SNSの投稿、検索結果、広告、知人の口コミなど、きっかけは複数の経路から生まれます。

この段階の顧客は、まだ買う気が固まっていません。「面白そう」「ちょっと気になる」という軽い感情で、数秒で通り過ぎてしまうのが普通です。

つまずきやすいのは、第一印象で何のお店か伝わらないケースです。広告のクリック先が商品の魅力を説明できていないと、認知が興味につながらないまま離脱が起こります。

ステージ2:興味・関心(もっと知りたくなる)

興味・関心は、知った商品について「もう少し詳しく知りたい」と感じ始める段階です。商品ページを読み込んだり、SNSで他の投稿を探したりと、自分から情報を集める行動が増えていきます。

顧客の感情は「自分に合うだろうか」という期待と疑問が入り混じった状態です。ここで知りたい情報がすぐ手に入らないと、関心が冷めて記憶から消えてしまいます。

接点になるのは、商品詳細ページ、ブランドストーリー、レビュー、SNSアカウントなどです。写真の質や説明文の具体性が、次の比較検討に進むかどうかを左右します。

ステージ3:比較検討(買うかどうか迷う)

比較検討は、購入を前提に他の選択肢と見比べる段階です。価格、送料、納期、返品条件、レビュー評価などを並べて、自分にとって損のない選択かどうかを慎重に判断します。

顧客の頭の中は「本当にこれでいいのか」という迷いでいっぱいです。Googleはこの迷いの多い検討区間を「メッシーミドル」と名付け、ここで信頼につながる情報が購入の背中を押すと整理しています。

EC運営でもっとも離脱が起きやすいのがこの段階です。送料が直前までわからない、レビューが少ない、似た商品との違いが説明されていないといった情報の欠落が、そのまま他店への移動につながります。

関連記事:ECサイトのFAQページの作り方|CVRを上げる質問設計と運用

ステージ4:購入(カートに入れて決済する)

購入は、カートに商品を入れて決済を完了する段階です。買う意思はほぼ固まっていますが、ここでもカゴ落ちと呼ばれる離脱が高い割合で発生します。

顧客は「早く済ませたい」「失敗したくない」という気持ちで操作しています。入力項目が多い、会員登録を強制される、希望の決済手段がないといった摩擦が一つでもあると、指が止まって離脱します。

接点はカートページ、入力フォーム、決済画面、購入完了メールです。フォーム項目を減らし、決済手段を増やし、カゴ落ちリマインドのメールを送る施策が、この段階の取りこぼしを減らします。

ステージ5:リピート・ファン化(また買う、人にすすめる)

リピート・ファン化は、一度購入した顧客が再び戻ってくる段階です。新規獲得より既存顧客の維持のほうがコストは低く、ここを伸ばせるかどうかで事業の利益体質が決まります。

顧客の感情は、届いた商品や購入後の対応に対する満足と不満の間で揺れています。期待を超える体験があればファンになり、期待を下回れば二度と戻ってきません。

接点は同梱物、フォローメール、会員プログラム、SNSでのつながりなどです。購入後の体験を設計できているEC事業者は、リピート率とLTV(顧客生涯価値)を着実に積み上げています。

カスタマージャーニーマップの作り方|6ステップの手順

ここからは、ECサイトのカスタマージャーニーマップを実際に作る手順を6つのステップで解説します。最初から完璧を目指さず、社内にある情報で仮説のマップを1枚作るところから始めるのが現実的です。

道具はExcelやGoogleスプレッドシートで十分です。表計算ソフトの行と列に書き込んでいくだけで、最初のマップは半日あれば形にできます。

ステップ1:マップを作る目的を1つに絞る

最初に決めるのは、このマップで何を解決したいかという目的です。「新規会員登録を増やす」「カゴ落ちを減らす」「リピート率を上げる」など、ビジネス上の課題を1つに絞ります。

目的が曖昧なまま作り始めると、あれもこれもと盛り込みすぎて、使えない地図ができあがります。狙う数字を1つ定めておくと、後のステップで何を書き、何を捨てるかの判断がぶれません。

ステップ2:ペルソナを1人に設定する

次に、旅の主人公となるペルソナを1人だけ設定します。年齢や性別だけでなく、抱えている悩み、商品を探す理由、よく使うSNSや検索の仕方まで具体的に描きます。

複数の顧客像を1枚に詰め込むと、行動も感情もぼやけて施策に落とせません。まずは売上の中心になっている顧客層を代表する1人に絞り、必要なら後から別ペルソナのマップを追加します。

ペルソナの材料は、既存顧客の購入データ、問い合わせ内容、レビューの言葉づかいから集められます。手元のデータを読み込むだけでも、実在の顧客に近い像をかなり描けます。

ステップ3:横軸にステージを引く

横軸に、認知・興味・関心・比較検討・購入・リピートの5ステージを並べます。扱う商材によっては「初回相談」や「サンプル請求」など、自社特有の段階を足しても構いません。

ステージの区切りは、顧客の気持ちが切り替わる地点を意識して引きます。「知っただけ」と「買おうか迷い始めた」では取るべき施策がまったく違うため、ここを分けておくことが後の精度を決めます。

ステップ4:縦軸に行動・感情・接点・課題を書き出す

縦軸には、各ステージで顧客がとる行動、抱く感情、自社との接点(タッチポイント)、つまずく課題を書き込みます。1マスずつ、ペルソナになりきって「この瞬間に何をして、何を思うか」を埋めていきます。

感情の欄では、期待だけでなく不安や面倒くささといったマイナスの気持ちも正直に書きます。マイナスの感情が立っている場所こそ、離脱が起きている改善の余地が大きい地点だからです。

接点の欄には、広告、検索、商品ページ、カート、メール、同梱物など実際に顧客が触れる場所をすべて挙げます。書き出してみると、認知には力を入れているのに購入後の接点がほとんどない、といった偏りが見えてきます。

ステップ5:離脱が起きている課題を特定する

マスが埋まったら、マイナス感情と接点の薄さが重なっている場所を探します。そこが顧客の旅の途切れている地点であり、優先して手を入れるべき課題です。

アクセス解析の数字と照らし合わせると、課題の確からしさが上がります。比較検討の段階で離脱率が高いとデータが示していれば、その地点の情報不足という仮説の裏づけが得られます。

現場の改善報告でも、感覚で「ここが弱い」と感じていた場所と、データ上の離脱地点がずれていた事例は少なくありません。マップと数字の両方で課題を確かめると、的外れな施策に時間を使わずに済みます。

関連記事:GA4でECサイトを分析する方法|見るべき指標と改善の進め方

ステップ6:課題を具体的な施策に落とし込む

最後に、特定した課題ごとに打ち手を決めます。「比較検討で送料がわからず離脱」という課題なら、「商品ページ上部に送料と納期を明記する」という具体的な施策に変換します。

施策は、誰がいつまでに何をするかまで決めて初めて動き出します。課題と施策、担当、期限を1つの表にまとめ、マップとセットで運用すると改善が前に進みます。

そのまま使えるテンプレートの構成|縦軸6項目×横軸5ステージ

カスタマージャーニーマップのテンプレートは、複雑にする必要はありません。横軸に5つのステージ、縦軸に6つの項目を置いた表が、ECサイトでもっとも使いやすい形です。

縦軸に並べる6項目は、行動、思考、感情、タッチポイント、課題、施策です。この6行があれば、顧客の旅と打ち手が1枚で完結します。

縦軸6項目の意味と書き方

1行目の「行動」には、そのステージで顧客が実際にとる動きを書きます。「インスタの広告をタップする」「レビューを5件読む」のように、観察できる事実として記述します。

2行目の「思考」と3行目の「感情」は分けて書きます。思考は「他店と比べてどうか」という頭の中の問い、感情は「不安」「ワクワク」といった気持ちで、両方そろうと顧客の状態が立体的に見えてきます。

4行目の「タッチポイント」には接点を、5行目の「課題」には離脱や不満の原因を書きます。そして6行目の「施策」に、その課題を解く打ち手を入れて1列が完成します。

テンプレートを埋めるときのコツ

最初の1周は、社内の情報と仮説だけで一気に最後まで埋め切ります。途中で調べ物を始めると手が止まるため、まずは空欄をなくして全体像を作ることを優先します。

埋め終えたら、レビューや問い合わせ、アクセス解析のデータで仮説を上書きしていきます。仮説から始めて事実で補正する進め方なら、データがそろっていない立ち上げ期の事業者でもマップを運用に乗せられます。

ステージ別の代表的な施策と数値の目安

マップで課題が見えたら、ステージごとに施策を選びます。ここでは5つのステージそれぞれで効果が出やすい施策と、判断の目安になる数値を挙げます。

すべてを同時に進める必要はありません。離脱がもっとも大きいステージから1つずつ手を入れるほうが、限られた人手でも成果が出ます。

認知・興味のステージ:入口の質を上げる

認知の段階では、広告やSNSのクリック先と中身がそろっているかを確認します。広告で見せた魅力が着地ページで説明されていないと、せっかくの訪問が数秒で離脱に変わります。

興味の段階では、商品写真と説明文の具体性を高めます。写真の点数を増やし、サイズ感や使用シーンが伝わるカットを足すだけでも、滞在時間と次のステージへの移動率は上がっていきます。

比較検討のステージ:迷いの材料を先回りで消す

比較検討では、顧客が抱く疑問を商品ページの中で先に解消します。送料、納期、返品条件、サイズ選びの基準、よくある質問を1ページ内に載せると、他店に答えを探しに行く理由が減ります。

レビューの見せ方も効きます。件数が少ないうちは、購入後のフォローメールでレビューを依頼し、星の数だけでなく具体的な使用感のコメントを集めると、検討中の顧客の判断材料として効いてきます。

購入のステージ:カゴ落ちの摩擦を取り除く

購入の段階では、決済までの摩擦を1つずつ減らします。カゴ落ちはEC全体で7割前後にのぼるとされ、入力フォームの項目削減やゲスト購入の許可だけでも改善の余地が大きい場所です。

カゴ落ちした顧客へのリマインドメールも有効な打ち手です。離脱から数時間以内に1通目を送る運用にすると、取りこぼした売上の一部を回収できるという報告もあります。

リピートのステージ:購入後の体験を設計する

リピートの段階では、初回購入から次の購入までの接点を設計します。商品到着のタイミングに合わせたフォローメールや、使い方を伝えるコンテンツが、満足を次回の購入につなげます。

優良顧客を見分けるには、購入頻度と金額で顧客を分けて見るRFMの考え方が役立ちます。よく買ってくれる層に手厚い特典を用意するなど、層に応じた施策がLTVを押し上げます。

関連記事:ECでファンコミュニティを作る方法|リピートを生む関係づくり

カスタマージャーニーマップでよくある失敗と回避策

マップ作りは、手順を踏めば誰でも形にできます。ただし運用の現場では、作っただけで終わってしまう典型的な失敗がいくつかあります。

事前に失敗の型を知っておくと、同じ落とし穴を避けられます。ここでは特に起きやすい4つのつまずきと、その回避策を順に見ていきます。

失敗1:作って満足し、施策につながらない

もっとも多いのが、きれいなマップを完成させた時点で満足してしまうパターンです。地図そのものは成果物ではなく、施策を決めるための道具に過ぎません。

回避するには、ステップ6の施策欄を必ず埋め、担当と期限まで決めます。マップ作成のゴールを「施策リストが1枚できること」と定義しておくと、作って終わりを防げます。

失敗2:データを見ずに想像だけで作る

ペルソナや感情を、担当者の思い込みだけで埋めてしまうのも危険です。想像で作った顧客像は、実際の顧客とずれていることが多く、的外れな施策を生みます。

仮説で書き始めること自体は問題ありません。回避のポイントは、レビュー、問い合わせ、アクセス解析という3つの実データで、後から必ず仮説を検証することです。

現場の改善報告でも、想像していた離脱地点と、データが示す離脱地点が大きく違っていた例は珍しくありません。感覚とデータを突き合わせる一手間が、施策の精度を分けます。

失敗3:完璧を目指して完成しない

最初から精緻なマップを作ろうとすると、情報収集に時間がかかりすぎて完成しません。立ち上げ期や少人数の運営では、調査に数週間かける余裕がない場合がほとんどです。

回避策は、まず半日で仮説のマップを1枚作り切ることです。粗くても全体像があれば議論が始められ、運用しながら精度を上げていくほうが結果的に早く成果につながります。

失敗4:一度作ったきり更新しない

顧客の行動や流入経路は、季節や市場の変化で移り変わります。半年前のマップが今の顧客と合っていない、ということは普通に起こります。

回避するには、マップを定期的に見直す日を決めておきます。月次の数字を振り返るタイミングでマップも一緒に更新する運用にすると、地図が古びずに使い続けられます。

作成後の運用|マップを施策のPDCAに組み込む

カスタマージャーニーマップは、作った後の使い方で価値が決まります。施策を回すPDCAの中心に置くことで、マップが生きた道具へと変わります。

具体的には、課題の特定から施策、検証、見直しまでをマップ起点で回します。ここでは運用に乗せる3つのポイントを解説します。

優先順位は離脱インパクトで決める

課題が複数見つかったとき、すべてに同時に取り組むのは無理があります。離脱している顧客の数と、その先で見込める売上の大きさを掛け合わせて、インパクトの大きい課題から手をつけます。

たとえば訪問数の多い比較検討段階で離脱率が高いなら、そこを1点突破するだけで全体の売上が動きます。小さな課題を10個直すより、大きな1つを直すほうが少ない労力で成果が出ます。

施策の効果はステージの指標で測る

打った施策が効いたかどうかは、ステージごとの指標で確かめます。比較検討の施策なら商品ページからカートへの遷移率、購入の施策ならカゴ落ち率というように、見る数字をあらかじめ決めておきます。

指標を決めずに施策を打つと、効果があったのか運が良かったのかが判断できません。マップの各ステージに「測る指標」を1つずつ紐づけておくと、検証がぶれなくなります。

チームでマップを共有して使う

マップは、作った担当者だけが持っていても効果が薄まります。広告、商品ページ、CRMの担当が同じ地図を見て動くことで、顧客体験のつなぎ目がそろいます。

月次の振り返りでマップを画面に映し、どのステージにどんな施策を打ち、数字がどう動いたかを全員で確認します。チームの共通言語になったマップは、施策の議論を早く前に進めます。

関連記事:EC戦略の立て方|売上を伸ばすための全体設計と優先順位

マップ作成に使えるツールと、まず用意するもの

専用ツールを導入しなくても、カスタマージャーニーマップは作れます。最初の1枚は、使い慣れた表計算ソフトで十分です。

ここでは無料で始められる道具と、作成前にそろえておきたい材料を整理します。

最初はスプレッドシートで十分

ExcelやGoogleスプレッドシートなら、行と列で縦軸と横軸をすぐ作れます。複数人で同時に編集でき、コメント機能で意見を出し合えるGoogleスプレッドシートは、チーム運用とも相性が良い選択です。

付箋とホワイトボードで作る方法も、アイデア出しの段階では有効です。手を動かしながら意見を貼り出し、まとまった内容をスプレッドシートに清書する流れにすると、議論と記録の両方が進みます。

作る前にそろえておきたい3つの材料

マップの精度を上げるには、3つの材料を手元に用意します。1つ目は購入データで、どんな顧客がいつ何を買っているかの実態がわかります。

2つ目は顧客の声で、レビューや問い合わせ、SNSのコメントから本音が読み取れます。3つ目はアクセス解析のデータで、どのページでどれだけ離脱しているかという行動の事実が手に入ります。

これら3つは、特別な投資をしなくても既存の運営データから集められます。完璧にそろえる必要はなく、あるものから使い始めて、運用しながら足りない情報を補っていく姿勢で問題ありません。

記入例|アパレルECのカスタマージャーニーを1枚にする

手順だけではイメージがつかみにくいため、具体的な記入例を見ていきます。年商1億円ほどのアパレルECを想定し、5ステージを順にたどります。

ペルソナは、30代前半の働く女性で、通勤に使える服をスマホで探しているという設定にします。目的は「商品ページからカートへの遷移率を上げる」と置きます。

認知から比較検討までの記入例

認知のステージでは、行動は「インスタの広告でワンピースを見かけてタップ」、感情は「かわいいけど自分に似合うかな」と書けます。課題は「広告とブランドの世界観に差があり、着地後すぐに離脱しやすい」点です。

興味のステージでは、行動は「商品ページとブランドのSNSを見比べる」、感情は「素材や着心地が気になる」となります。課題は「写真が正面1枚しかなく、サイズ感や生地の質感が伝わらない」ことです。

比較検討のステージでは、行動は「他店の似た商品とレビューを比べる」、感情は「失敗したくない、返品できるか不安」と整理できます。課題は「送料と返品条件がカート画面まで進まないとわからない」点に集約されます。

購入からリピートまでの記入例

購入のステージでは、行動は「カートに入れて決済へ進む」、感情は「早く終わらせたい」です。課題は「会員登録が必須で、入力項目が多く途中で面倒になる」ことが離脱の原因をつくります。

リピートのステージでは、行動は「届いた服を着て、満足ならまた見に来る」、感情は「次も買いたい、でもきっかけがない」と書けます。課題は「購入後のフォローがなく、再来店の入口がない」点です。

この1枚を見渡すと、施策の優先順位がはっきりします。訪問の多い比較検討と購入の課題、つまり送料表示の明確化とフォーム改善から着手すれば、目的に置いた遷移率の改善に直結すると判断できます。

カスタマージャーニーマップを作るメリット

ここまでの手順を踏んでマップを作ると、運営にいくつかの変化が生まれます。単なる図解の作業ではなく、事業の進め方そのものを変える効果があります。

代表的なメリットを3つ挙げます。いずれも、立ち上げ期から成長期のEC事業者が直面しがちな悩みに対応しています。

施策の優先順位がはっきりする

マップがあると、限られた人手と予算をどこに使うかの判断が速くなります。離脱の大きい地点が見えているため、効果の薄い施策に時間を取られずに済みます。

「やったほうがよさそう」という曖昧な理由で施策を選ぶ状態から抜け出せます。課題とインパクトに基づいて打ち手を選べるようになり、改善のスピードが上がります。

チームの目線がそろう

顧客像が1枚に可視化されると、部署や担当をまたいだ会話がかみ合います。広告担当と商品ページ担当が、同じ顧客の同じ悩みを前提に議論できます。

共通の地図があることで、施策の重複や抜け漏れも見つけやすくなります。チーム全体で顧客の旅を見渡せる状態は、運営の質を底上げします。

顧客視点で改善が回り出す

マップ作りは、運営者の都合ではなく顧客の体験を起点に考える習慣を生みます。自社の売りたい順番ではなく、顧客が知りたい順番でページや導線を組み直すきっかけが生まれます。

顧客視点が定着すると、日々の小さな判断もぶれにくくなります。新しい施策を検討するたびに「顧客の旅のどこに効くのか」を問う癖がつき、改善の方向が定まっていきます。

立ち上げ期の小規模ECがまず取り組むべきこと

人手もデータも限られる立ち上げ期では、本格的なマップ作りに時間をかけられないという声をよく聞きます。それでも、簡易版のマップを作る価値は十分にあります。

規模が小さいうちは、顧客一人ひとりの行動が見えやすいという強みがあります。少ない購入データやレビューでも、顧客の旅の輪郭はつかめます。

まずは購入してくれた数人を深く知る

立ち上げ期は、実際に買ってくれた数人の顧客を深く知ることから始めます。どこで商品を知り、何に惹かれ、何を迷ったかを、可能なら直接聞いてみます。

少数でも生の声を集めると、想像では出てこない発見があります。「送料の高さで一度離れたが、レビューを見て戻ってきた」といった具体的な道のりが、マップの精度を一気に高めます。

完璧な5ステージより1つの課題に集中する

最初から5ステージをすべて埋めようとせず、いちばん困っている1ステージに絞る方法もあります。「カゴ落ちが多い」と感じているなら、購入ステージだけを掘り下げて課題と施策を出します。

1つのステージで成果が出る体験をすると、マップ作りの効果が実感できます。手応えをつかんでから他のステージに広げていくほうが、無理なく運用を続けられます。

ペルソナや商材が複数ある場合の考え方

扱う商材や顧客層が複数あると、1枚のマップでは収まらないことがあります。その場合の整理の仕方を押さえておきます。

原則は、ペルソナごとに別のマップを作ることです。顧客像が違えば旅も課題も変わるため、無理に1枚にまとめないほうが施策に落とせます。

主力の顧客層から1枚ずつ作る

複数のペルソナがいても、すべてを同時に作る必要はありません。売上への貢献が大きい主力の顧客層から、1枚ずつ順に作っていきます。

主力ペルソナのマップで改善のサイクルが回り始めたら、次の層に着手します。優先順位をつけて進めることで、限られた時間でも着実にマップを増やせます。

高単価・検討期間の長い商材は段階を増やす

家具や高額家電のように検討期間が長い商材では、比較検討のステージをさらに分けると実態に合います。「情報収集」と「最終比較」を分けるなど、迷いの過程を細かく描きます。

反対に、日用品のように衝動買いが多い商材では、ステージを簡素にしても問題ありません。商材の性質に合わせて段階の数を調整するのが、使えるマップを作るコツです。

混同しやすい用語の整理|ジャーニーマップと周辺の言葉

カスタマージャーニーの周辺には、似た言葉がいくつもあります。意味を取り違えると議論がかみ合わなくなるため、主要な用語を整理しておきます。

言葉の定義そのものより、自社の施策にどう関わるかを押さえることが大切です。ここでは現場でよく出る3つの言葉を取り上げます。

カスタマージャーニーとカスタマージャーニーマップ

カスタマージャーニーは、顧客が購入に至るまでの道のりという「現象」そのものを指します。一方でカスタマージャーニーマップは、その道のりを表に描いた「成果物」です。

つまり旅が先にあり、それを地図にしたものがマップ、という関係です。会話の中で両者が混ざっても大きな支障はありませんが、地図を作ること自体が目的化しないよう、現象としての旅を見失わないことが肝心です。

タッチポイントとチャネル

タッチポイントは、顧客が自社と接触するすべての地点を指します。広告、検索結果、商品ページ、メール、同梱物、カスタマーサポートなど、接点はオンラインとオフラインの両方にまたがります。

チャネルは、そのうち集客や販売の経路として使う手段を指すことが多い言葉です。マップ作りでは、まずタッチポイントを漏れなく洗い出すことが、接点の偏りを見つける近道です。

ファネルとジャーニーの違い

ファネルは、認知から購入へと顧客が絞り込まれていく様子を漏斗にたとえた考え方です。数の減り方に注目するため、どのステージでどれだけ離脱したかを測るのに向いています。

ジャーニーは、数だけでなく顧客の感情や接点まで描くため、なぜ離脱したのかを考えるのに向いています。ファネルで「どこで」を見つけ、ジャーニーで「なぜ」を掘る、という使い分けが実務では役立ちます。

作成にかかる期間と進め方のスケジュール

マップ作りにどれくらい時間がかかるのかは、よく聞かれる疑問です。仮説ベースなら半日、データで補正しながらでも2週間ほどが目安です。

長くかけることが目的ではありません。早く粗いマップを作り、運用しながら直していくほうが、結果的に成果につながります。

初日:仮説でマップを1枚作り切る

初日は、社内にある情報と仮説だけでマップを最後まで埋めます。完成度よりも、空欄をなくして全体像を作ることを優先します。

関係者を集めて半日で一気に作ると、議論しながら埋められて効率が上がります。この時点でのマップは、あくまで検証前のたたき台という位置づけです。

1〜2週目:データと顧客の声で補正する

1週目から2週目にかけて、レビュー、問い合わせ、アクセス解析のデータで仮説を検証します。想像と事実がずれている箇所を見つけ、マップを上書きしていきます。

補正が一巡したら、課題に優先順位をつけて施策を動かし始めます。あとは月次でマップを見直す運用に乗せれば、地図が古びずに使い続けられます。

ステージごとに設定したいKPIの例

マップを施策の改善に使うには、各ステージに測る指標を紐づけておくと運用がぶれません。ここでは5つのステージで見ておきたいKPIの例を挙げます。

すべてを毎週追う必要はありません。手を入れているステージの指標だけを重点的に見れば、施策の効果を見極められます。

認知・興味で見る指標

認知のステージでは、広告やSNSからの流入数、クリック率を見ます。入口にどれだけ人が集まり、どれだけ着地ページに進んでいるかを把握します。

興味のステージでは、商品ページの滞在時間や直帰率を確認します。ページに来た人が中身を読んでいるか、すぐに離れているかが、写真や説明文の改善の必要性を教えてくれます。

比較検討・購入で見る指標

比較検討のステージでは、商品ページからカートへの遷移率を追います。検討中の顧客がどれだけ購入の一歩手前まで進んでいるかが、情報提供の質を映します。

購入のステージでは、カゴ落ち率と購入完了率を見ます。カートに入れた後の離脱がどれだけ起きているかがわかり、フォームや決済の改善効果を測れます。

リピートで見る指標

リピートのステージでは、再購入率とLTVを確認します。一度買った顧客がどれだけ戻ってきて、生涯でいくら使ってくれるかが、購入後の体験設計の成果を示します。

これらの指標をマップの各ステージに書き添えておくと、施策と数字が1枚でつながります。打ち手の前後で数字を比べる習慣がつき、改善の手応えが見えてきます。

SNS時代の購買行動とマップの描き方の変化

顧客の旅は、SNSの普及で一直線ではなくなりました。検索して比較して買うという順番だけでなく、SNSで偶然見かけて衝動的に買う、買った後にSNSで発信する、といった行き来が当たり前になっています。

そのため、マップも一方向の矢印だけでは実態を捉えきれません。ステージを行ったり来たりする動きや、購入後の発信が次の顧客の認知を生む循環まで意識して描くと、今の購買行動に近づきます。

購入後の発信が次の認知をつくる

商品に満足した顧客がSNSに投稿すると、その投稿が別の顧客の認知のきっかけを生みます。リピート・ファン化のステージが、認知のステージに戻ってつながる循環です。

この循環を意識すると、購入後の体験設計が新規集客にも効くとわかります。同梱物やフォローメールで「思わず人に伝えたくなる体験」を作ることが、広告費をかけずに認知を広げる打ち手です。

接点が増えた分、抜け漏れを洗い出す

SNS、検索、比較サイト、レビュー、メールと、顧客が触れる接点は年々増えています。接点が多いほど、自社が手を打てていない空白地帯も生まれやすくなります。

マップで接点をすべて書き出すと、力を入れている場所と放置している場所の差が見えます。現場でも、認知の入口には予算を割いているのに、比較検討の情報提供が手薄だったと気づく事例は珍しくありません。

マップを自社で回すか、支援を受けるかの判断

カスタマージャーニーマップは自社だけでも作れますが、客観的な視点が欲しい場面もあります。社内の常識にとらわれて、顧客のつまずきに気づけないことがあるからです。

判断の目安は、データの読み解きと施策の優先順位づけに自信が持てるかどうかです。マップは描けても施策に落とせない、数字をどう見ればいいかわからないという状態なら、外部の視点を借りる選択も検討に値します。

自社で回せるケース

顧客の声やアクセス解析のデータが手元にあり、それを読んで仮説を立てられるチームなら、自社運用で十分に回せます。小さく作って試し、結果を見て直すサイクルを習慣にできているかが分かれ目です。

大切なのは、完璧な分析より行動の速さです。粗くてもマップを起点に施策を動かし、数字で振り返る運用ができていれば、外部に頼らずとも改善は前に進みます。

支援を受けたほうがよいケース

離脱の原因がどうしても特定できない、施策を打っても数字が動かないという状態が続くなら、第三者の視点が突破口になりえます。社内では当たり前すぎて見えない課題を、外から指摘してもらえるからです。

支援を選ぶ際は、自社ECと顧客体験の設計まで踏み込んで伴走してくれる相手かどうかを見ます。マップを作って終わりではなく、施策の実行と検証まで一緒に回せるパートナーが、立ち上げ期から成長期の事業者には心強い存在です。

判断に迷うときは、まず1ヶ月だけ自社でマップを回してみる方法もあります。実際に手を動かしてみて、どこで詰まるかがわかれば、支援が必要な領域も具体的に見えてきます。

自社運用と外部支援は、どちらかを選んで終わりではありません。立ち上げ期は自社で小さく回し、成長の節目で専門家の視点を入れるなど、フェーズに応じて組み合わせる進め方が現実的です。

よくある質問

Q:カスタマージャーニーマップは作るのにどれくらい時間がかかりますか?
A:仮説ベースで作るなら半日ほどで1枚を埋め切れます。レビューやアクセス解析のデータで補正しながら仕上げる場合でも、2週間ほどが目安です。最初から完璧を目指さず、粗いマップを作って運用しながら直すほうが早く成果につながります。

Q:データがほとんどない立ち上げ期でも作れますか?
A:作れます。立ち上げ期は購入してくれた数人を深く知ることから始め、どこで商品を知り何に迷ったかを直接聞くと精度が上がります。5ステージすべてを埋めようとせず、いちばん困っている1ステージに絞って課題と施策を出す進め方も有効です。

Q:専用ツールは必要ですか?
A:最初の1枚は不要です。ExcelやGoogleスプレッドシートの行と列で縦軸と横軸を作れば十分で、複数人で編集できるGoogleスプレッドシートはチーム運用とも相性が良い選択です。アイデア出しの段階では付箋とホワイトボードを使い、まとまった内容をスプレッドシートに清書する方法もあります。

Q:マップを作ったのに施策につながりません。何が足りないのでしょうか?
A:よくある原因は、課題を施策と担当、期限まで落とし込めていないことです。現場でも、きれいなマップを完成させた時点で満足し、打ち手が動き出さない例は少なくありません。マップ作成のゴールを「施策リストが1枚できること」と定義し、誰がいつまでに何をするかまで決めると改善が前に進みます。

Q:ペルソナが複数いる場合は1枚にまとめるべきですか?
A:無理に1枚にまとめないほうが施策に落とせます。顧客像が違えば旅も課題も変わるため、ペルソナごとに別のマップを作るのが原則です。すべてを同時に作る必要はなく、売上への貢献が大きい主力の顧客層から1枚ずつ順に作っていきます。

Q:作ったマップはどのくらいの頻度で見直せばよいですか?
A:月次の数字を振り返るタイミングで一緒に更新する運用がおすすめです。顧客の行動や流入経路は季節や市場の変化で移り変わるため、一度作ったきり放置すると今の顧客と合わなくなります。見直す日をあらかじめ決めておくと、地図が古びずに使い続けられます。

まとめ

カスタマージャーニーマップは、顧客の購買プロセスを1枚に可視化し、思いつきの施策から抜け出すための道具です。認知から比較検討、購入、リピートまでの旅を描き、離脱が起きている地点を施策に落とし込むことで、限られた人手でも成果につながる改善が回り始めます。

まずは社内にある情報で仮説のマップを半日で作り、データで補正しながら運用に乗せてみてください。「どのステージから手をつければいいかわからない」「マップは作ったが施策に落とせていない」といったご相談があれば、ぜひお気軽にお問い合わせください。TSUMUGUでは、立ち上げ期から年商5億円未満の事業者に伴走し、顧客の旅の設計からCVR・LTVの改善まで現場で使える手順をご提案します。→ まずは相談する(無料)

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